研究課題/領域番号 |
22K05185
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研究機関 | 埼玉大学 |
研究代表者 |
松岡 圭介 埼玉大学, 教育学部, 准教授 (90384635)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 泡沫分離 / セシウム / ピッカリングフォーム / ポリアクリル酸 / ベシクル |
研究実績の概要 |
泡沫分離は水溶液中のセシウム除去に有効であるが、除去速度が遅いことが問題である。そこで、セシウム除去に有効な界面活性剤を合成し、選択する。また、多数の陰イオン基を有する高分子(ポリアクリル酸)を界面活性剤と共に汚水に添加し、金属の吸着サイトを大幅に増加させる。 本年度の研究で、ポリアクリル酸を用いたセシウム除去に関して、泡沫分離系に添加するポリアクリル酸の適正な濃度が存在することが分かった。ポリマー濃度が比較的高濃度になると、逆に除去率が低下する。また、ポリアクリル酸の分子量は小さいほうが、除去率が高いことが判明した。ピッカリングフォーム(固体微粒子を含む泡)を形成するアニオン性界面活性剤系にポリアクリル酸を添加すると、セシウムの除去速度が無添加系の3倍になることが分かった。一方、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)系ではポリアクリル酸の添加はセシウムの除去を阻害する結果となった。しかし、有機色素イオンの除去ではSDS系でも相乗効果を示しており、除去する物質に合わせて界面活性剤とイオン性高分子を選択する必要があることが判明した。しかし、ポリアクリル酸が気-液界面でどのような吸着位置に存在し、吸着剤として機能するのかまでは、本年度は明らかにすることはできなかった。 これらの結果を、ポリアクリル酸を用いた泡沫分離によるセシウム除去という題目で、第73回コロイドおよび界面化学討論会 でKEY NOTE講演として選択され、発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度は、研究で使用するイオン性ポリマーの種類を泡沫分離の実験から決定した。硫酸基、スルホン酸基、カルボキシル基(アクリル酸)のようなアニオン性ポリマーを泡沫分離の実験系で使用し、セシウムの除去率と除去速度を求めた。硫酸基のポリマーはセシウムの吸着に有利だが、低分子量のポリマーの種類が少ないために、2年目以降は比較的種類が多く、除去率が高いポリアクリル酸を泡沫分離の研究に用いることにした。 次に、泡沫分離で使用する新規の陰イオン性界面活性剤(ベシクル形成剤)の新規合成を行った。これまでの泡沫とは異なる微粒子系の泡(ピッカリングフォーム)を形成させるためである。ピッカリングフォームを形成できる界面活性剤はほとんど報告されていないために、その泡沫は特異的な挙動を示し、イオン性ポリマーとの相性がよく、セシウムの除去率を高めた。また、その系列のアルキル鎖長が異なるベシクル形成に有利なスルホコハク酸の界面活性剤の合成に成功した。この新規の界面活性剤を次年度以降、セシウム除去のために泡沫分離系で使用していく。また、その界面活性剤の会合体形成を小角X線散乱(@SPring-8)から測定し、現在、解析中である。
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今後の研究の推進方策 |
現時点では泡沫分離系でセシウム除去に関するイオン性ポリマーの分子量と添加量の測定は1-2回のみとなった。そのため、この実験を継続し、再現性を確かめる。また、ベシクルサイズを界面活性剤の種類を変えることで調整しながら、泡沫分離実験を行い、金属の除去速度と除去率を決定する。その金属は主に放射性金属元素のセシウムとストロンチウムを使用する。研究によって、最適なポリマーの分子量とベシクルサイズを決定する。また、多種の放射性金属元素を混合したモデル混合溶液を調製し、金属間での除去や吸着の優先性を決定する。研究が予定どおりにうまくいかない場合は、界面活性剤の官能基の種類を変えて実験を行う。ベシクル形成に有利なスルホコハク酸の界面活性剤の合成も継続し、SAXSとTEM測定から分子構造とポリマーのバルク中での相互作用を明らかにする。
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