研究課題/領域番号 |
22K05188
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研究機関 | 福井大学 |
研究代表者 |
岡田 敬志 福井大学, 学術研究院工学系部門, 准教授 (30641625)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | PGM錯体 / 形成挙動 / 溶解性変化 |
研究実績の概要 |
セラミックス表面におけるPGM錯体の形成挙動調査において、以下の知見が得られた。KOHやB2O3を含む媒体において、500℃で白金線を加熱し、保持時間を変えながら、白金線表面の状態を観察した。その結果、加熱初期では白金線表面の酸化がみられ、時間が経過すると溶融媒体が白金線内部へ入り込んでいく様子が観察された。このとき、反応容器として使用したアルミナ坩堝の一部が溶融媒体に溶解し、そのアルミナ成分も白金線内部へと移行していることもわかった。同じ媒体中で白金粉末を加熱し、水溶性白金化合物を精製したのち、これを水で溶解し、未溶解残渣を調べた。その結果、未溶解残渣にはアルミナ成分が含まれ、ラマン分光法によりAl-O-Alの架橋構造に起因するとみられるピークが観察された。溶解性変化の挙動追跡においては、加熱温度を500℃から600℃に高め、生成した白金化合物の溶解性への影響を調べた。その結果、加熱温度の上昇に伴い、水への溶解性が低下した。ラマン分光法で未溶解残渣を分析したところ、Al-O-Alの架橋構造に起因するとみられるピークの強度が増加していた。以上より、アルミナ容器を用いたカリウムホウ酸塩媒体中での白金化合物の形成においては、酸化された白金とアルミナ成分の反応が生じる。、それによりAl-O-Alの架橋構造がより多く形成されると、水への化合物の溶解性が低下することが示唆された。これを抑制することを目的とし、媒体中にフッ化ナトリウムを添加することで、水溶性白金化合物の生成量が増加することもわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
生成物の表面観察からPGM錯体の形成挙動をとらえることができ、生成物中の化学結合状態の分析からも、前者と関連するとみられるデータが得られた。アルミナ成分との反応が進行してしまうと、水に対する白金化合物の溶解性が低下するというデータもあり、上記の定性的な分析データと傾向が一致する。また、フッ化ナトリウム添加によって水溶性白金化合物の生成量が増加するという知見は、アルミナ成分と白金との反応を抑制する効果を示唆しており、反応機構解明に役立つ知見である。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、合成したPGM錯体の溶解機構の解明に取り組む。反応媒体にCa(OH)2を加えて、希酸溶解性白金化合物を合成するほか、可能な限り、媒体由来の塩を除いた状態で水溶性白金化合物を合成する。これらの化合物に対して、連続的に液を添加し、溶出成分の経時変化を調べることで溶解機構の解明に取り組んでいく。
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次年度使用額が生じた理由 |
反応挙動の追跡用に、微量融点測定システムを購入する計画であったが、別予算で購入した熱分析装置によってより詳細な熱分析が可能となった。また、合成温度の低温下によって、加熱時の様子を直接観察しやすくなったこともあり、上記の融点測定システムを購入対象から外した。余剰分の予算については、本年度購入を予定しているポテンショ/ガルバノスタットの上位版を購入する費用に充てる。それによって、本年度の研究テーマにおいて、より詳細な情報を得られるようにする。
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