研究実績の概要 |
有機分子配位子で保護された二元合金ナノ粒子の高温液相合成を行い、TEM, STEM-EDS, XRD, XPS, XAFS測定等を用いてナノ粒子の合金構造(粒径、形態、分散性)を推定し、HERやORR反応における電極触媒としての電気化学特性(CV, LSV, EIS)を評価し、反応活性の高い合金触媒の探索と粒子形態の制御法を確立することを目標とした。 令和4年度は予備的な電気化学実験として、アセチルアセトナート金属錯体を出発原料に用い、有機分子配位子(オレイルアミンやオレイン酸)で保護されたスピネル型二元合金酸化物ナノ粒子触媒を合成した。金属組成比、オレイルアミン/オレイン酸の比を変化させたナノ粒子の構造・組成解析は、XRD, XPS, XAFS測定を用いて行った、OERやORRの電気化学反応については三極式電解槽を用いて行い、一連のCV測定、LSV測定、CA測定、EIS測定から電気化学特性を評価した。回転電極を用いて動的拡散挙動の解析(例えば、Koutecky-Levich分析)などを行った。また、過電圧印加時の触媒表面の酸化状態や構造歪みの変化をoperando XAFS測定から評価することができた。 さらに、貴金属と卑金属の組合せ(例えば、Pt-Co, Pt-Ni等)の二元合金ナノ粒子の液相化学合成に展開し、さまざまな組成の合金ナノ粒子を合成する手がかりを得ることができた。今後は、酸性あるいはアルカリ水溶液中でのHER反応やORR反応を中心に、酸化還元活性、安定性、耐久性等の電気化学特性(CV, LSV, EIS)の評価を行い、電極表面上での電子移動速度や律速段階等の反応メカニズムやダイナミクスに及ぼす合金効果(サイズ効果や結合電子状態)の影響について詳細に検討する。
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今後の研究の推進方策 |
令和4年度に合成方法が確立できなかった有機分子配位子(オレイルアミンやオレイン酸)で保護された二元合金ナノ粒子触媒を合成する。例えば、窒素雰囲気下でマイクロ波を照射するなど、触媒粒子表面でCoやNiの酸化物が形成されないような工夫が必要である。また、金属組成比、オレイルアミン/オレイン酸の比を変化させたナノ粒子の構造・組成解析は、STEM-EDS, XRD, XPS, XAFS測定によって行う。 合成と並行して、HERやORRの電気化学反応については三極式電解槽を用いて行い、一連のCV測定、LSV測定、CA測定、EIS測定から電気化学特性を評価する。また、回転電極や回転リング電極を用いて動的拡散挙動の解析(例えば、Koutecky-Levich分析)などを行い、合金を構成する金属の違いに由来する反応速度定数(電極表面での拡散律速か電荷移動による反応律速かを評価)および対称性因子等のパラメータを特定する。二元合金電極触媒の電気化学特性として興味深いのは、過電圧印加時の触媒表面の酸化状態や構造歪みの変化であるので、表面金属種と反応物(あるいは反応中間体)間での電子移動過程や微視的相互作用をoperando XAFS測定から評価する試みを始める。さらに、電極反応における酸化還元活性、安定性、耐久性などについても触媒表面の構造変化(構造歪み)と結び付けて明らかにする。なお、XAFSを用いた微視的構造解析は、高エネルギー加速器研究機構放射光研究施設PFまたは高輝度光科学研究センターSPring-8に課題申請を行い、必要とされるビームタイムを獲得する予定である。
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