研究課題/領域番号 |
22K05193
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
難波 徳郎 岡山大学, 環境生命科学学域, 教授 (80218073)
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研究分担者 |
紅野 安彦 岡山大学, 環境生命科学学域, 准教授 (90283035)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | セシウム分離回収 / 汚染土壌 / 塩化溶融 / 相分離 / 揮発 |
研究実績の概要 |
本研究では,土壌に非放射性Csを添加し溶融することで,模擬汚染土壌をまず作製しておき,模擬汚染土壌に塩化物を溶融促進剤と共に添加し,低温で溶融処理することにより,塩化物相を揮発させるのではなく,固相で析出させ,Csを塩化物の固相に選択的に取り込ませることで土壌と分離し,Csを取り込んだ固相を水に溶解させ,その後イオン交換によりCsを分離回収するための処理プロセスの開発を目指している。 まず先行研究の再現実験を試みた。MgCl2を添加した土壌を1100℃で溶融したが,土壌とは異なる白色の固形物が生成するものの,冷却後潮解してしまい,土壌と白色固形物を分離することができなかった。無水のMgCl2を用いたり,溶融促進剤として添加したLi2CO3の量や溶融温度を変更するなど,様々な条件を試みたものの,潮解することない安定な白色固形物を得ることができなかった。白色固形物は塩化物のはずなので,熱処理後の試料を水に浸漬し,塩化物相を溶解させることで土壌から分離することができると考えた。 そこで,加熱処理後の試料が入った坩堝に水を注ぎ,その後流し出すことで土壌と水相を分離した。加熱処理前後の重量差から揮発量を,加熱後に坩堝に水を注ぎ,水を流し出した後乾燥し,坩堝に残った試料の重量を不溶性固体の量,加熱処理後の重量との重量差を可溶性固体の量とした。模擬汚染土壌とMgCl2の添加量を一定にし,Li2CO3添加量を変化させて加熱処理実験を行った。Li2CO3添加量の増加に伴い,不溶性固体量が増加したのに対して,可溶性固体量と揮発量はほぼ一定であった。 今年度は,学内共同利用可能なICP装置がすべて故障していたため,不溶性固体と可溶性固体の組成分析を行うことができず,各相中のCs量を調べることができなかった。次年度は,利用可能な装置を探し,組成分析を行う予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
今年度は,先行研究の再現実験から着手したが,土壌とは別に白色の固形物の生成を確認することができなかった。先行研究も当研究室で実施されたものであるが,当時と異なる点として,使用した電気炉が異なることが挙げられる。そのため,設定温度が同じでも,炉内の実際の温度が両者の電気炉で異なるため,異なる結果になってしまったと考え,設定温度を変えながら実験を繰り返したが,結局,室温で潮解することなく安定に存在することができる白色固形物を生成させることができなかった。そこで,研究実績の概要に記載した通り,白色固形物の分離回収は断念し,試料全体を水に浸漬することで,土壌と加熱処理により生成する塩化物を分離するように,方針を転換した。これにより,予定した研究計画に遅れが生じることとなった。 方針転換後は,実験自体はスムーズに進めることができたものの,組成分析を行うために使用を予定していたICP装置が故障により使用することができなかった。学内共同利用が可能な装置は2台あるものの,いずれも故障しており,修理の見込みもないことが判明した。これにより,組成分析についても計画の見直しを行わざるを得なくなった。これにより,さらに研究計画に遅れが生じることとなった。
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今後の研究の推進方策 |
模擬汚染土壌中のCsは加熱処理により,相分離により生成した塩化物相(白色固化体)と塩化物相が揮発することにより気相へ移行すると考えられる。この他に,模擬汚染土壌中に留まるCsも存在するはずである。結局,Csが存在する相としては,①水に不溶な模擬汚染土壌(不溶性固体),②水に可溶な塩化物相(可溶性固体),③気相の3相が考えられる。③の気相中のCs量を定量分析するのは困難なので,①と②の各相に存在するCs量から③のCs量を推定することになる。加熱処理後の坩堝中の固相が①と②の混合物であるが,②の塩化物相は水に可溶なので,坩堝中の固相を水に浸漬することで,②の塩化物相を水に溶解させれば,①と②の相を分離することができる。そこで今後は,①の土壌中および水に溶解後の②の塩化物相中のCs量を正確に定量分析する必要があり,その分析手法を検討することになる。候補としては,蛍光X線(XRF)分析,原子吸光(AAS)分析,ICP分析の3つの方法が挙げられる。ICP分析装置については,対象元素の発光スペクトルを測定するICP-AESあるいはICP-OES法を用いた装置については,学内共同利用が可能な装置はすべて故障中で利用することができない。それに加えて,ICP-AES/OES法ではCsの感度が低いため,Cs含有量が低い場合,検出されない可能性もある。そこで,ICPを利用する場合は,検出限界が低い質量分析(MS)を用いたICP-MS法を用いた装置を探す必要がある。 以上の状況を踏まえて,令和5年度においては,まずはXRF,AAS,ICPの3つの組成分析手法を試し,適切な組成分析手法を確立させることを目指す。その後は,加熱処理条件(温度,時間),添加物の種類や量を系統的に変化させながら,①から③までの各相に存在するCs量がどのように変化するかを検討する予定である。
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