研究課題/領域番号 |
22K05215
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研究機関 | 京都工芸繊維大学 |
研究代表者 |
浅岡 定幸 京都工芸繊維大学, 材料化学系, 准教授 (50336525)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 光触媒反応 |
研究実績の概要 |
(1) 連結点の分子設計:親・疎水鎖の連結点の側方に短鎖アルキル基を介してアジド基を導入した両親媒性液晶ブロック共重合体(lBC)の合成に成功した。得られたlBCは薄膜中で、対応するアジド基を持たないlBCと同等の、垂直配向シリンダー型のミクロ相分離構造を与えたことから、側方アジド基の導入によるナノ構造への影響はほとんどないことを確認した。現在、末端アルキンを有するReビピリジン錯体および亜鉛ポルフィリンユニットを設計・合成し、Click反応による導入を検討中である。 (2) 疎水性マトリクス部の利用:ビフェニルは架橋性を持たないため、自立膜を作製することができない。そこで架橋部として少量のスチルベンまたはカルコンをモノマーユニットとして共重合させることにより、自立膜の作製を検討した。現在、自立膜としての強度を確保するため、共重合体比の最適化に取り組んでいる。 また、液晶部を集光部として利用することを目的として、ビフェニルの他に共役系を拡張した芳香族メソゲンについても検討し、波長領域の拡張を目指した。本年度はまず、フェニル基間をジアセチレンユニットで連結した構造について検討を進め、シリンダー型のミクロ相分離構造の形成を確認した。 (3) 親水性シリンダー部の利用:多孔質膜上に成膜したlBC膜に対して、Ptナノ粒子溶液を通じることによって、Ptナノ粒子との複合化を試みた。シリンダーよりも大きな径をもつPtナノ粒子はlBC膜表面に堆積するものの、ファウリングを起こさず、水の透過流束は維持されることを確認した。この複合膜についてはシリンダー出口付近を反応場とする系として利用することを想定している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
側方に光触媒を導入した新規設計のlBCについては、その合成経路を確立し、垂直配向シリンダー型のミクロ相分離構造を維持することまで確認できたことから、本設計の基礎は確立できたものと考えている。一般にClick反応は温和な反応条件であり、副反応を起こす可能性が低いことから、汎用性が高く、様々な金属錯体触媒に展開可能であるものと期待している。 ビフェニルをメソゲンとするlBCについても、架橋点となるメソゲンをもつモノマーと共重合させることで、自立膜の形成が可能であることを確認した。光触媒としてRe錯体をもつlBC膜については、本法により疎水性マトリクス部を集光部とする自立膜を反応場とする系の確立が可能となるものと期待される。 シリンダーよりも径の大きなPtナノ粒子を表面に堆積させたlBC膜の作製に成功したことから、これを亜鉛ポルフィリンを導入したlBCと組み合わせ、電荷キャリアとしてメチルビオロゲンを用いた水素生成反応系に展開できるものと期待される。
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今後の研究の推進方策 |
(1) 連結点の分子設計:ReおよびPtビピリジン錯体、亜鉛ポルフィリンを手始めに、末端アルキンを有する金属錯体を設計・合成し、Click反応によるlBCへの導入を試みる。 (2) 疎水性マトリクス部の利用:連結点にRe錯体をもつlBCについて、ビフェニルをメソゲンとするlBC自立膜を作製し、二酸化炭素の光還元反応を検討することで、疎水性マトリクスの集光能を評価する。 (3) 親水性シリンダー部の利用:シリンダー径よりも小さい粒径をもつPtナノ粒子をlBC膜に通じ、シリンダー内部へのナノ粒子の導入を試みる。併せて、比較的粒径の大きなPtナノ粒子については、亜鉛ポルフィリンを導入したlBC膜の表面にナノ粒子を堆積させ、電荷キャリアとしてメチルビオロゲンを用いることで、シリンダーの入り口付近を反応場とする水素生成反応系への適用を検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度に費やした薬品・材料・顕微鏡関連消耗品等は、他の研究課題と共用可能であったことから、そちらの予算で購入することとした。なお次年度以降には合成量の増加、成膜を含むプロセス、および光触媒反応の検討回数の大幅な増加が見込まれることから、予算を繰越し、充当することした。
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