研究課題/領域番号 |
22K05227
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研究機関 | 名古屋工業大学 |
研究代表者 |
猪股 克弘 名古屋工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (80232578)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 形状記憶高分子 / 炭素繊維強化複合材料 / 高分子複合材料 / エラストマー |
研究実績の概要 |
形状記憶高分子は、温度変化などの外部刺激により試料形状が自発的に変化する。一方、架橋高分子をマトリックスとし、炭素繊維を複合化した炭素繊維強化高分子複合材料(CFRPC)は、軽量・高弾性率・高強度などの特性から、航空機や自動車などの分野で構造材料として注目されている。本研究では、CFRPCが形状記憶材料としての特性を持つことに着目し、炭素繊維の剛性により形状変化時に大きな変形力を発現する形状記憶CFRPCの調製を行う。さらに、CFRPCの構造・物性と形状記憶特性の相関を明らかにし、様々な用途に応用可能な形状記憶CFRPCの設計指針を確立することを目的としている。2022年度は、以下の研究を行った。 1.マトリックスとして架橋ポリメタクリル酸メチル(PMMA)を用い、架橋密度の異なるCFRPC試料を調製した。炭素繊維を複合化した試料ではPMMA単体に比べ、170℃のゴム状態での動的貯蔵弾性率が約3桁増大した。また、ガラス状態で一時的形状を固定化した試料をゴム状態に昇温した場合の形状回復過程では、複合化により回復速度が向上した。一方、架橋密度の高いCFRPC試料の方が高温での貯蔵弾性率が高いにもかかわらず、形状回復速度は低下することが分かった。 2.マトリックスがゴム状態におけるCFRPCの性状を理解するため、マトリックスが室温でゴム状態の、炭素繊維強化エラストマーの調製を行った。得られた試料は、CFRPCであるにも関わらず曲げや捻じれによる大変形が可能で、かつ一般的な高分子エラストマーよりも10倍以上大きな貯蔵弾性率を示した。さらに、引張強度や引き裂きエネルギーの値も、マトリックス単体と比べて10倍以上増大した。また、マトリックスの化学構造の違いによる炭素繊維との間の接着性の違いを評価し、マトリックス‐炭素繊維界面の接着強度が機械的特性に与える影響についての知見を得た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
アクリル樹脂をマトリックスとしたCFRPCの調製を行い、架橋密度と、基本的な熱的・力学的性質について評価を行い、形状記憶特性との関係について明らかにした。また、CFRPCのゴム状態での特性を調べるため、室温でゴム状態の炭素繊維強化エラストマーを調製し、特異な力学特性に関する知見を得た。さらに、炭素繊維とマトリックスとの間の界面接着性に関する評価を行った。以上の結果より、2022年度の本研究課題はおおむね順調に進展していると評価した。
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今後の研究の推進方策 |
当初の計画に沿って研究を推進する予定である。具体的には、アクリル樹脂やエポキシ樹脂をマトリックスとして、炭素繊維クロスの種類、組成、マトリックスとの界面接着性、配向性などの異なる試料を調製し、その力学特性や形状記憶特性の調査を行う。 また、新規に取り組む事項としては、これまで用いてきた長繊維の炭素繊維クロスに加えて、熱可塑性の複合材料に用いられる短繊維化した炭素繊維を使用したCFRPCを調製し、炭素繊維の性状の違いによる形状記憶特性への影響について検討する。
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