研究実績の概要 |
2023年度はCO2ガスの添加・除去による塩橋形成のon/offに基づくネットワークポリマーの構造制御に関する検討を行い、以下の結果を得た。 ヘキサメチレンジアミンとオルト酢酸トリメチルをバルクで加熱し、生成するエタノールを減圧下で除去することにより、ポリ(ヘキサメチレンアセトアミジン) (PAmd6)を得た。1H NMRによる解析から、このPAmd6のMnは2,900と見積もられた。Pamd6と直鎖状のポリエチレンイミン(PEI, Mn 2,500)のDMF溶液(0.02 mol unit/L each)に室温でCO2ガスをバブリングしたところ、瞬時に白濁してゲル化した。このゲルを濾過して室温で乾燥させたもののFT-IRスペクトルを測定したところ、塩橋に特徴的な (i) 1,660 cm-1、(ii) 1,567 cm-1および1,388 cm-1の吸収が観測された。これらは、それぞれ、(i) アミジン基のνC=N+と (ii) カルバミン酸基のνCO2-に帰属され、このゲルがアミジン・カルバミン酸塩橋により架橋されていることを示している。CO2をバブリングして得られた白濁のゲル混合物に、40度でArガスをバブリングしたところ、直ちに透明の溶液に変化した。溶媒を除去して得られた混合物の1H NMRスペクトルより、CO2が除去され、PAmd6とPEIの混合物に戻っていることが確かめられた。 CO2バブリングによる架橋とArバブリングによる脱架橋は可逆であり、何度でも繰り返すことが可能であった。ただし、この系は水分に敏感であり、少量でも水が存在するとカルバミン酸生成反応と競争的に、炭酸が生成し、PAmd6が炭酸塩となり、架橋効率が落ちることがわかった。このことは、N,N'-ジシクロヘキシルアセトアミジンとジブチルアミンを使ったモデル反応でも確かめられた。
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