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2022 年度 実施状況報告書

ナノドメインとして振る舞う星型ポリマーによる高分子材料のテーラーメイド的改質

研究課題

研究課題/領域番号 22K05230
研究機関滋賀県立大学

研究代表者

金岡 鐘局  滋賀県立大学, 工学部, 教授 (10275167)

研究期間 (年度) 2022-04-01 – 2025-03-31
キーワード星型ポリマー / リビング重合 / ラジカル重合 / 高分子ゲル / 高分子改質剤 / 結晶性高分子 / RAFT重合
研究実績の概要

1.星型ポリマーを架橋点にもつゲルの合成
星型ポリマーの合成時に用いる架橋剤に、N,N’-メチレンビスアクリルアミド(BIS)を用いてアーム鎖の重合度、分岐数が異なるさまざまな星型ポリマーを合成した。ゲル中の星型ポリマー分子のモル濃度がほぼ等しくなるようにゲルを合成したところ(濃度/アーム重合度を一定)、重合度に対して弾性率および破断伸びが極大値を示した。粘度測定から星型ポリマーの重なり濃度を求めたところ、重なり濃度より高濃度の星型ポリマーがゲル中に存在していると、高い力学特性を示すことがわかった。これらの結果は、アーム鎖間が充分に相互作用することが力学特性の向上に重要な役割を果たしていることを示している。架橋剤に疎水性のものを用いると、水中でのゲル生成時の網目鎖形成を阻害し、生成ゲルの弾性率が低下した。小角X線散乱(SAXS)測定より、ゲル中で星型ポリマー架橋点が比較的均一に分散していることが明らかとなった。
2.星型ポリマーのナノ分散による結晶性高分子の特性改質
付加開裂連鎖移動(RAFT)重合を用いてアーム鎖重合度が異なる星型ポリ(n-ブチルアクリレート)(PBA)を合成した(アームDPn = 102, 196)。星型ポリマーの末端カルボキシ基と、別途合成したポリカプロラクトン(PCL)(DPn = 36, 69)を縮合させることで、目的とする星型ブロックコポリマーを得た。5wt%の星型P(BA(100)-b-CL(36))を添加したPCLフィルムは無添加のものと比較して最大応力、弾性率、伸びが増大した。ジブロック構造によってマトリックスPCLの結晶性部位が繋ぎ合わせられ、星型ポリマーとの間で滑りが起こったためであると考えられる。また、柔軟なゴム成分を添加したにもかかわらず弾性率が向上していることから結晶構造にも影響を与えている可能性が高い。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

星型ポリマー架橋ゲルに関しては、星型ポリマー分子の設計とゲル化反応の条件を適切に選ぶことが、力学特性の向上に重要であることを示すことができた。また、SAXS測定より、比較的秩序だった構造のゲルが生成していることも明らかにした。
ブロック星型ポリマー改質剤については、結晶性のPCLに数%混合するだけで、生成フィルムの力学特性が著しく変化することを示せた。
以上のように、申請時の研究計画調書に記載した当初の令和4年度の研究目的は十分達成されている。

今後の研究の推進方策

星型ポリマー架橋ゲルについては、ゲルの網目鎖を構成するモノマーとして種々の汎用的な親水性化合物を検討し、星型ポリマー架橋剤による均一網目形成の普遍性を明らかにすることを令和5年度の主な目的として進める。
星型ポリマー改質剤については、令和5年度に結晶構造・結晶化挙動と力学特性の相関について重点的に調べる。例えば、偏光顕微鏡観察などを用いて、結晶化速度、核生成速度と添加星型ポリマーの構造との相関を調べる。

次年度使用額が生じた理由

新型コロナウイルスの影響で、研究活動の縮小などにより、年間に使用する研究費が減少し、大学における運営交付金を優先して使用した結果、次年度使用額が生じた。
次年度使用額の8から9割は、試薬、溶媒、ガラス器具などの物品費に使用する予定である。

  • 研究成果

    (7件)

すべて 2023 2022

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (5件)

  • [雑誌論文] Structure-property correlation of crosslinked domain hydrogels exhibiting thermoresponsive mechanical toughening and hybridization with photoluminescent carbon dots2022

    • 著者名/発表者名
      Shohei Ida, Takahiro Okuno, Miki Morimura, Kazumasa Suzuki, Hiroki Takeshita, Masatoshi Oyama, Keiji Nakajima, Shokyoku Kanaoka
    • 雑誌名

      Polymer Chemistry

      巻: 13 ページ: 3479-3488

    • DOI

      10.1039/D2PY00423B

    • 査読あり
  • [雑誌論文] pH-responsive aggregation control of multiarm star polymers depending on the ionic segment sequence of arm polymers2022

    • 著者名/発表者名
      Hiroomi Kitajima, Shohei Ida, Shukanta Bhowmik, Shin-ichi Yusa, Shokyoku Kanaoka
    • 雑誌名

      Polymer Journal

      巻: 54 ページ: 715-725

    • DOI

      10.1038/s41428-022-00621-3

    • 査読あり
  • [学会発表] 一般的な構造を有するアクリレート系多分岐星型ポリマーの新たな機能:特異的表面特性および改質剤効果2023

    • 著者名/発表者名
      伊田翔平、谷川弘樹、CHANG WEICHEN、善田晃平、金岡鐘局
    • 学会等名
      第72回高分子学会年次大会
  • [学会発表] 種々のアーム分子量を持つ星型ポリマーコアを架橋したゲルの力学特性2022

    • 著者名/発表者名
      鈴木颯馬、伊田翔平、竹下宏樹、金岡鐘局
    • 学会等名
      第71回高分子討論会
  • [学会発表] 結晶性セグメントを外層に有する星型ポリマーとの複合化による高分子材料の力学特性変化2022

    • 著者名/発表者名
      善田晃平、伊田翔平、金岡鐘局
    • 学会等名
      2022年日本化学会中国四国支部大会 広島大会
  • [学会発表] 異種セグメントを有する星型ポリマーの精密合成と結晶性高分子材料との複合化による力学特性変化2022

    • 著者名/発表者名
      善田晃平、伊田翔平、金岡鐘局
    • 学会等名
      第68回高分子研究発表会(神戸)
  • [学会発表] 星型ポリマー架橋ゲル:多分岐星型ポリマー架橋剤の構造がゲル化挙動および力学特性に及ぼす効果2022

    • 著者名/発表者名
      鈴木颯馬、伊田翔平、竹下宏樹、大山雅寿、中島啓嗣、金岡鐘局
    • 学会等名
      第71回高分子学会年次大会

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公開日: 2023-12-25  

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