研究課題/領域番号 |
22K05232
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研究機関 | 同志社大学 |
研究代表者 |
古賀 智之 同志社大学, 理工学部, 教授 (10388043)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | ハイドロゲル / ペプチド / 自己組織化 / 形状記憶 / 足場材料 |
研究実績の概要 |
本研究は、高次構造・生体機能設計が容易な人工ペプチドと材料特性に優れる合成高分子(アミノ酸ビニルポリマー)を組み合わせるハイブリッド分子戦略により、温度/pHなどの外部刺激に応答して機能発現する革新的なハイドロゲル材料の調製とその物性評価を行う。さらに、それらの三次元細胞足場材料などへのバイオ応用を目指している。 本年度得られた主な成果を以下にまとめる。 (1) 前年度に合成した細胞接着性ペプチド(RGDS)をグラフト鎖に有する温度応答性アミノ酸ビニルポリマー・ハイブリッドゲルの特性を総合的に評価した。特にハイドロゲルの粘弾性(レオロジー分析)、温度応答挙動(膨潤率測定)、形状固定/記憶性に及ぼすグラフト率の影響を明らかにした。いずれも熱可逆的な水素結合形成に基づくUCST型の温度応答性を示し、様々な温度域で形状固定/記憶が可能なことを見出した。 (2) ハイブリッドゲルの生体親和性を評価した。いずれのゲルも細胞毒性・刺激性は低く、高い生体親和性を有することがわかった。またゲル表面への細胞接着性は、RGDSグラフト鎖の導入により著しく向上し、本ハイドロゲルが良好な細胞足場材料として機能することを明らかにした。また、ゲルの形状固定機能を利用して一つのゲル中に弾性率の異なる領域をつくり出せること、またそれに基づき細胞接着挙動を制御できることも見いだした。 (3)アミノ酸由来ビニルポリマーを基盤とするハイドロゲル材料の拡張を進めた。アミノ酸構造に基づいて発現されるLCST型やUCST型温度応答性を活用して、インジェクタブル性、形状固定/記憶性、自己修復性を有するゲルの開発に成功した。また、アミノ酸ポリマーの特性とゲル機能との相関に関する知見を集積した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画の通り、水素結合性アミノ酸由来ビニルポリマーのグラフト鎖にpH応答性の自己組織性ペプチドや細胞接着性ペプチドを導入した種々のハイブリッドポリマーの合成に成功し、それらの構造特性およびゲル特性を明らかにすることができた。また、これらハイドロゲルの新しい細胞足場材料としての応用に関する評価も進んでおり、順調に研究が進捗していると言える。次年度に予定している計画を順調に進めていくことが出来ると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
前年度から引き続き各種グラフト型ハイブリッドポリマーからなるハイドロゲルの特性・機能評価を進めていく。ハイブリッドポリマーのカクテル化によるゲル構造・物性・機能のチューニング(最適化)を行う。また、ハイブリッドゲルの多重刺激応答タイプへの拡張に加えて、三次元足場材料や分子徐放材料などバイオマテリアルとしての有用性を検討していく。本ペプチドーポリマー・ハイブリッド戦略によるスマートゲル材料の設計指針の確立を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究は予定通り進んでおり、次年度の助成金と合わせて、研究試薬等の消耗品の費用として使用するため。
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