研究課題/領域番号 |
22K05234
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研究機関 | 東京工業高等専門学校 |
研究代表者 |
山本 祥正 東京工業高等専門学校, 物質工学科, 准教授 (90444190)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | プロトン伝導性高分子電解質膜 / 天然ゴム / 4-スチレンスルホン酸 / グラフト共重合 |
研究実績の概要 |
ゴム状高分子に由来する優れた柔軟性にプロトン伝導性が付与された高性能プロトン伝導性高分子電解質膜を創製することを目指し、グラフト共重合によりゴム状高分子粒子表面にプロトン伝導性高分子を固定化する検討を行った。 ゴム状高分子として天然ゴムを用い、直径約1 μmの天然ゴム粒子が水に分散したラテックスの状態でゴム粒子表面にプロトン伝導性高分子を固定化するための検討を行った。天然ゴムラテックスは、尿素と界面活性剤で処理した後、遠心分離により洗浄することで精製した脱タンパク質化天然ゴムラテックスを用いた。グラフト共重合は、4-スチレンスルホン酸を1.0 mol/kg-rubber、ラジカル開始剤としてt-ブチルヒドロペルオキシド/テトラエチレンペンタミンを0.033 mol/kg-rubber使用し、30℃で3時間攪拌することにより行った。得られた生成物のキャラクタリゼーションは、FT-IRにより行い、ポリ(4-スチレンスルホン酸)に由来するシグナルを確認した。生成物は水に24時間浸漬し、浸漬前後のポリ(4-スチレンスルホン酸)のシグナルの変化によりグラフト効率を評価した。4-スチレンスルホン酸のエステル化は、4-スチレンスルホン酸ナトリウムを銀塩に変換し、アセトニトリル中で臭化エチルと反応することにより行い、カラムクロマトグラフィーで精製することにより疎水性モノマーである4-スチレンスルホン酸エチルを得た。4-スチレンスルホン酸エチルのグラフト共重合は、上述の条件で行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
4-スチレンスルホン酸のグラフト共重合を行ったところ、70%以上のモノマー反応率で重合が進行した。しかしながら、4-スチレンスルホン酸のホモポリマーのみが生成し、天然ゴム粒子表面へのグラフト共重合は進行していないことをFT-IR測定により明らかにした。これは、4-スチレンスルホン酸は水溶性モノマーであるため、水中でモノマーの単独重合が進行したことによると考えられる。そこで、4-スチレンスルホン酸のエステル化により疎水性モノマーを合成し、天然ゴム粒子表面にグラフト共重合した後、加水分解によりプロトン伝導性高分子を天然ゴム粒子表面に固定化することを試みた。2022年度は、4-スチレンスルホン酸エチルのグラフト共重合を行うことにより重合が進行し、天然ゴム粒子表面へのグラフト共重合が進行することを見出したが、プロトン伝導性高分子であるポリ(4-スチレンスルホン酸)の固定化に至らなかったため、やや遅れていると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
2022年度までに4-スチレンスルホン酸エチルを疎水性モノマーとして使用することにより、天然ゴム粒子表面にグラフト共重合が進行することを確認した。2023年度はグラフト効率の向上を目指し、天然ゴム粒子表面への4-スチレンスルホン酸エチルのグラフト共重合の反応条件を最適化する。また、得られたグラフト共重合体の加水分解を行うことにより、プロトン伝導性高分子を天然ゴム粒子表面に固定化する。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初、2022年度にプロトン伝導性高分子であるポリ(4-スチレンスルホン酸)を天然ゴムに固定化する予定であったが、前駆体であるポリ(4-スチレンスルホン酸エチル)の固定化に留まった。次年度はポリ(4-スチレンスルホン酸エチル)をプロトン伝導性高分子に変換する検討が必要となったため、その試薬代として次年度使用額が生じた。
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