研究実績の概要 |
これまでに開発された高性能有機機薄膜太陽電池 (OPV) の活性層材料は、合成コストが非常に高いといった問題点を有していた。そのため、次世代の再生可能エネルギーであるOPVの普及に向けて、短工程で合成可能な高性能 n 型半導体を開発することは極めて重要な課題である。本研究では、研究代表者が独自に開発してきた (E)-1,2-ビス(5,6-ジフルオロベンゾ[c][1,2,5]チアジアゾール-4-イル)エテン (FBTzE) 骨格を用い、複数の電子伝導パスを形成する高性能非縮環型 n 型半導体の開発をおこなう。令和4年度では、「中心アクセプターと二つの末端アクセプターが互いに積層可能な S 型構造」を有する新規 n 型半導体 BEDP-IC-F の合成をおこなった。 まず、これまでに研究代表者らが確立してきた合成手法を基に、本研究の鍵となる中心 FBTzE 骨格を10 g スケールで合成した。続いて、FBTzE 骨格と連結するドナー骨格であるジチエノピラン (DTP) ユニットを合成した。得られたFBTzE 骨格とDTPユニットを用い、脱水素型カップリングによる合成を試みた。しかしながら、反応は全く進行せず、目的のカップリング体を合成することはできなかった。そこで直截アリール化によりFBTzE骨格とDTPユニットの連結を検討したところ、Pd触媒や配位子などの条件を最適化することにより、目的のカップリング体を得ることに成功した。今後は、ホルミル化と既に合成している末端 IC ユニットとのKnoevernagel 縮合により、目的の S 型分子 BEDP-IC-F を合成する。その後、有機薄膜太陽電池へと応用し、本分子設計の有用性を明らかとする。
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