研究実績の概要 |
有機薄膜太陽電池の効率向上にむけて、クロロフィル-aから誘導される自己会合性の亜鉛クロリンとフラーレン(C60)を組み合わせたデバイスを作製し、動作原理の解明を行った。この電池は従来型のドナー・アクセプター系とは異なり、光合成Z-スキームと同様のエネルギー配列で作動することを明らかにした。クロリン層へエチレンジアミンを添加することにより、効率を280%増大できることを示した。 紅色光合成細菌の産生するバクテリオクロロフィル-aを素材として、ペロブスカイト太陽電池へ応用できる機能性色素の合成を行った。17位エステル末端に疎水性/親水性の異なる5種の側鎖を導入した自己会合性バクテリオクロリンを合成し、ホール輸送層としての特性を調べたところ、脂溶性のドデシル基を導入した色素J型会合体薄膜を用いた電池が最も高い光電変換効率を示した。 クロロフィルとバクテリオクロロフィルの自己会合性誘導体を溶液乾固法でTi3C2Txナノシート上にコーティングした有機無機ハイブリッド型光触媒を作製し、光照射下において水分解により水素発生を行う際の触媒効率を検討した。光吸収域の異なる2種の色素を順次積層させることにより、近赤外に至るまでの幅広い波長領域の光を活用することができ、各色素それぞれを単独で用いた場合よりもはるかに水素発生効率が向上することを示した。 クロロフィルポリマー膜を利用したスーパーキャパシタの構築を目的として、電気化学的重合法に適したモノマーユニットの構造探索を行った。クロリン環の3位置換基(ビニル、エテニル)ならびに中心金属(Mg, Co, Ni, Cu, Zn, Ga)をかえたモノマーを合成し、ITOガラス基板上に重合させて蓄電性能を評価したところ、NiとCuクロリンが他の金属錯体よりも良好な特性を示した。
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