世界のエネルギーは、石油(化石燃料)に依存しており、この石油(化石燃料)は有限の資源のため、将来的に枯渇すると言われている。そのため、再生可能エネルギーの利用が期待されており、本研究では水を水素と酸素に分解して、この水素をエネルギーとして利用する水分解光触媒に着目して、研究を実施している。水分解光触媒粒子に光を照射し、水を水素と酸素に分解するときに、水分解光触媒粒子の表面が活性点になっていると言われているが、水素と酸素が生成する機構は未解明である。そこで本研究では、水分解光触媒としての性能を有するチタン酸ストロンチウム(SrTiO3)のナノキューブを合成し、この粒子表面の微構造解析を実施し、高効率水分解光触媒の材料設計につながる指針を得ることに焦点をあてた。 ペロブスカイト型構造を有するSrTiO3は水熱法を用いて合成を行った。水熱法は、ボトムアップ型アプローチが可能な溶液反応で、原子レベルから粒子を構築することができ、粒径や形状をコントロールすることができる。この水熱法を用いて得られたSrTiO3は結晶面が露出したナノクリスタルとして得られ、この結晶面が水分解光触媒性能に大きな影響を与えると考え、SrTiO3ナノクリスタルの粒子表面の微構造解析を実施した。球面収差法制付き走査透過型電子顕微鏡を用いてSrTiO3ナノクリスタルの粒子表面を観察した結果、水熱合成条件によって粒子表面の原子配列が異なることが示唆された。粒子表面の原子配列が異なるということは、水分解光触媒の性能を影響を与える可能性がある。現在、粒子表面を構築する元素の種類について、検討を実施している。また、自由自在に粒子表面の原子を入れ替えるために水熱合成条件の検討もあわせて実施している。水分解光触媒の性能向上につながる機構を解明するために、SrTiO3ナノクリスタルの粒子合成と微構造解析を引き続き実施する。
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