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2022 年度 実施状況報告書

青色マンガン(V,VI)リン酸化合物の合成とキャラクタリゼーション

研究課題

研究課題/領域番号 22K05266
研究機関千葉大学

研究代表者

沼子 千弥  千葉大学, 大学院理学研究院, 准教授 (80284280)

研究期間 (年度) 2022-04-01 – 2025-03-31
キーワードハイドロキシアパタイト / 湿式沈殿法 / X線回折 / マンガン / 共沈 / XAFS / 加水分解
研究実績の概要

シリアで発掘された青色ビーズと同質の青色物質を非生物系で合成することを目的として、はじめに、常温常圧・湿式でハイドロキシアパタイト(HAp)の沈殿を合成条件の検討を行った。硝酸カルシウム水溶液にビュレットでリン酸水素アンモニウム水溶液を滴下しながら、駒込ピペットで硝酸やNaOHを添加して、pH を 2, 6, 7, 8, 9, 10 に調整して合成を行った沈殿はいずれも白色であった。生成物は吸引ろ過後に風乾し、粉末X線回折で同定を行った。pH = 2ではCaHPO4・2H2Oのみがみられたが、pH = 6以上でHApが生成していくとともに減少し、pH = 9, 10ではHApのみが存在することがわかった。
次に、硝酸カルシウム水溶液に当量の塩化マンガンを共存させ同様の方法でMn添加HApを合成することを試みた。HApと異なり生成物は褐色であった。しかし生成物ではX線回折のシャープなピークが観察されず、非晶質であることがわかった。そこで、Mn-L3 XAFS測定を行ったところ、生成物中のマンガンは2価で、MnCl2の形で沈殿に吸着しており、HApの結晶構造の中には入っていないことがわかった。薄赤色で吸光係数が小さいMnCl2が主成分であるにもかかわらず、生成物が褐色に呈色した理由として、NaOHを添加する際のpH増大によりHApの生成より先にMn(OH)2が生成し、溶存酸素により沈殿表層が酸化を受け濃褐色のMnOOHが生成したことが考えられた。HApの形成にはpH9-10の塩基性にする必要があるため、この共存マンガンの加水分解とそれによる水酸化物イオン欠乏を防ぎながらHApが形成する合成条件を今後検討する。またこれと同時に、マンガンがHApの結晶構造に置換しさらに青色を呈するような物質の合成法を、乾式の高温実験やゾルゲル法など検討を行う。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

シリアで発掘された青色ビーズと同質の青色物質を非生物系で合成することを目的として、まず、常温常圧・湿式でHApの沈殿を合成条件の検討を行い、そのプロトコルを確立した。今後は、HApの結晶構造にマンガンを添加したMn添加HApを得ることが目標となる。
一方、600℃~800℃でカルシウム・リン酸・フッ素・マンガンを混合させた粉末の出発物質からフルオロアパタイトにマンガンが置換し青色を呈色する物質の合成に成功している先行研究がある。本研究の湿式沈殿法では非晶質のカルシウム・リン酸・フッ素・マンガンを含む沈殿生成物が得られているが、これを上述の高温での加熱合成の出発原料として用いることで青色のアパタイトに変化する可能性があ、その意味でまずマンガン添加HApの合成まで進んでいることは大きな意味がある。研究の全体のおよそ1/4まで到達していると考える。

今後の研究の推進方策

HApの形成にはpH9-10の塩基性にする必要があるため、この共存マンガンの加水分解とそれによる水酸化物イオン欠乏を防ぎながらHApが形成する合成条件を今後検討する。この生成物合成、すなわちHApの結晶構造にマンガンを添加したMn添加HApを得た後、1) 加熱や酸化還元を用いてマンガンの化学状態を変化させ青色に呈色したMn添加HApを得る、2) 青色呈色Mn添加HApとシリアの青色ビーズとの異同について、蛍光X線分析やXAFS等の非破壊分析を用いて検討する 3)青色発色のメカニズムを検討する と研究を進めていく。
またこれと同時に、マンガンがHApの結晶構造に置換しさらに青色を呈するような物質の合成法を、乾式の高温実験やゾルゲル法など従来HAp合成に用いられる方法によっても検討を行う。

  • 研究成果

    (1件)

すべて 2022

すべて 学会発表 (1件)

  • [学会発表] 沼子 千弥、林 実貴子、佐藤 遼太朗、宣 冬陽、鮮 樹輝、寺内 美裕2022

    • 著者名/発表者名
      第58回X線分析討論会
    • 学会等名
      第58回X線分析討論会

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公開日: 2023-12-25  

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