研究課題/領域番号 |
22K05273
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研究機関 | 甲南大学 |
研究代表者 |
高嶋 洋平 甲南大学, フロンティアサイエンス学部, 准教授 (40720652)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 多孔性金属錯体 / ガス分離 / 膜 |
研究実績の概要 |
多孔性金属錯体(MOF)はナノメートルサイズの規則的細孔を有する結晶性の材料であり、ガス分離材料としての利用が近年注目されている。特に、膜を形成させ分離膜として利用するのが理想的であるものの、MOFのみで膜を形成させた場合、膜内のMOF結晶間に生じる空隙や粒界が欠陥サイトとなり高い分離能が得られないという問題があった。そこで本研究では、我々が近年見出した構造変換反応をプレス条件で進行させることで欠陥フリーMOF連続膜の合成を目指した。構造変換とはあるMOF(A)が他のMOF(B)へと構造が変化する現象のことであり、構造変換の反応条件を変えることで、得られるMOF(B)の結晶サイズを制御可能であることをこれまで明らかにしている。本研究ではプレスによりMOF(A)の結晶同士を近接させた状態で変換させることにより結晶融合を効率的に進行させ、欠陥フリーMOF(B)連続膜の形成を目指した。 本研究では(A)前駆体MOF(MIL-101)の合成とそれらを用いた構造変換反応条件検討、(B)プレス条件下での構造変換の反応条件検討と膜の評価および(C)(B)で得られたMOF膜を用いた分離特性の評価の3つのサブテーマを設定した上で研究を遂行しており、現在までに(A)と(B)について有益な結果が得られている状況にある。今後、反応条件(反応温度、反応時間、プレス圧、プレス時間など)のさらなる精密化に関する検討を行いながら、サブテーマ(C)へと移行していく予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、(A)前駆体MOF(MIL-101)の合成とそれらを用いた構造変換反応条件検討、(B)プレス条件下での構造変換の反応条件検討と膜の評価および(C)(B)で得られたMOF膜を用いた分離特性の評価の3つのサブテーマを設定した上で研究を遂行しており、現在までに(A)と(B)について有益な結果が得られている状況にある。以下にその詳細について示す。 (A):さまざまな置換基を有したMIL-101を用いて構造変換反応を試みたところ、置換基によって構造変換反応のしやすさが大きく異なることがわかった。特に、ニトロ基とブロモ基を有したMIL-101については構造変換反応が非常に早く、本研究目的に適していると判断した。また、MIL-101の欠陥量が構造変換に与える影響についても調べたところ、欠陥量は構造変換の変換速度にほとんど影響をあたえていないこともわかった。構造変換プロセスについては、XPS測定、PDF分析などの結果から考察した。 (B):(A)での条件検討の結果を踏まえて、構造変換反応を用いたMOF膜の合成を試みたところ、プレスしたMIL-101からMIL-53のMOF膜が形成可能であることがわかった。 反応条件によって、膜内のMIL-53結晶の状態が大きく異なることが明らかになっており、現在、その精密制御に向けた条件検討を継続している段階である。
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今後の研究の推進方策 |
現在、サブテーマ(B)を遂行している段階にある。今後はMOF膜形成の精密制御にむけてさらなる条件検討を行う予定である。また、得られた膜については、その吸着、分離特性を評価する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じた理由:国際学会参加のための必要経費を円安などの影響などを考慮して多めに見積もったため。 使用計画:円安の影響により試薬などの物品費も値上がりしているため、その値上がり分に充当する予定である。
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