研究課題/領域番号 |
22K05289
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研究機関 | 九州工業大学 |
研究代表者 |
田中 将嗣 九州工業大学, 大学院工学研究院, 准教授 (90597650)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | アンモニア関連機能性材料 |
研究実績の概要 |
アンモニアは肥料や工業用の用途のほかに、カーボンフリーの燃料実現に向けた取り組みが盛んである。エネルギーキャリアとしての活用を想定する場合、アンモニア自身の材料としての性質・利用価値向上も重要な研究といえる。本研究ではアンモニアを使った無機化合物合成技術を応用し、遷移金属アミドとアンモニア錯体を利用して解離平衡状態を固体中で実現しようとしている。 研究初年度は四塩化チタンTiCl4とナトリウムアミドNaNH2の反応を試みることにより、遷移金属アミドの合成を行った。赤外分光法により反応物にTi-NH2基が存在することが判明し、これを化学輸送して適切に熱分解することによって複合アニオン化合物であるTiNClが合成できることを見出した。これは従来複雑な合成を必要とする同化合物を、封管のみで合成できる新しい合成法を確立した。この物質がインターカレーションによって超伝導を示すことはよく知られているが、この合成法が物性へ及ぼす影響について光電子分光法を用いて議論し、論文としてまとめた。またこれらの合成反応過程の検証に伴い、四塩化チタンとアンモニアを反応させる従来のTiNCl合成法も吟味し、合成過程による基礎物性変化を調べ、論文としてまとめた。 上記検討に加え、次年度検討予定であった自家製ソックスレー抽出器を設計・製作し、液体アンモニアを用いた合成反応も試みた。チタンのみでなく、ジルコニウムやハフニウムを用いた同様の反応も試みている。さらにアンモニアをフラックスとして利用するための高圧力下での合成・測定に関する原理検証も並行した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本年度はナトリウムアミドNaNH2を用いた四塩化チタンTiCl4との反応が制御できるようになり、当初計画していたTiCl4Cl-NH2基の置換検証が行えた。さらには未解明点も多いTiNCl超伝導体に関する物性研究も並行することができ、物性物理分野への影響も大であったと認識している。次年度以降着手予定であった液体アンモニアを使った合成や高圧力の合成も原理検証を行えており、当初の計画以上に進展していると判断している。
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今後の研究の推進方策 |
NH2を置換したTiCl4にNH4Clを配位させ、アンモニア錯塩を合成する反応機構の解明を進める。液体アンモニアを利用した合成法や高圧力を用いた反応などを試みる予定である。また得られた化合物はアンモニア吸蔵特性などの機能性評価も試みる。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究計画に若干の変更があったため。 翌年度は共用設備購入により差動型示差熱天秤システムの導入を検討している。
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