研究課題
本研究は,ポリエチレンテレフタレート(PET)分解微生物・酵素を探索する方法を確立すること,またその方法を利用して未知・未培養微生物由来の新規PET分解酵素を取得,PETのリサイクルに即した酵素へと進化させることを目指している.令和4年度は,以下の項目に取り組んだ.(1)要素技術の確立PETを粉体化すれば,比表面積が増大し,酵素による分解が迅速に進行するため,PET分解微生物・酵素の探索が容易になると考えた.その原理実証を,好熱性放線菌Saccharomonospora viridis由来PET分解酵素(Cut190)を用いて行った.その結果,粉体化PETは同重量のPETフィルムに比べ,2倍以上分解された.また,ボトルやパッケージなどの使用済みPET製品も,粉体化することで分解性が向上することが分かった.この成果は,AMB Express誌に掲載された.また,酵素の分子進化に資する要素技術を確立し,Biochemical Engineering Journal誌に発表した.(2) 堆肥メタゲノムからのPET分解酵素遺伝子の探索高いPET分解能を示す酵素の多くは,堆肥由来の好熱性放線菌のクチナーゼである.そこで,高温発酵堆肥より抽出したメタゲノムを鋳型にし,好熱性放線菌のクチナーゼ遺伝子に対するユニバーサルプライマーを用いてPCRを行った.得られた増幅産物をクローニングし,32種類の候補遺伝子を得た.いずれの遺伝子産物も,好熱性放線菌(Thermobifida属細菌,Actinomadura属細菌,Thermoanaerobacterales目細菌)のクチナーゼ,エステラーゼなどと高い相同性を示した.各遺伝子を大腸菌で組換え発現させ,26種類のタンパク質を可溶性画分に発現させることに成功した.
2: おおむね順調に進展している
メタゲノムからのPET分酵素遺伝子探索が進展したため,それを優先的に進めたが,掲げていた目標は最低限達成することができた.今後の成果が見込まれる.
PETを粉体化することでその分解性が高まることが実験的に確認されたので,申請時に掲げたPET分解微生物の探索法を確立するとともに,その方法を実践する.また前年度までに得られたPET分解酵素の活性評価を行う.
メタゲノムからのPET分酵素遺伝子探索が進展したため,それを優先的に進めた.このため,未使用額が生じた.未使用額は,PET分解微生物の探索法を確立するための経費に充てる.
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Biophysics and Physicobiology
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https://researchmap.jp/ryoiizuka