研究課題/領域番号 |
22K05318
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
麻生 真理子 九州大学, 薬学研究院, 准教授 (30201891)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | リジン修飾 / 蛍光修飾 / ベンズアルデヒド / 機能導入 |
研究実績の概要 |
新たな機能導入や活性を増強した有用な蛋白質の創出に選択的で均一なリジン修飾は重要である。我々はオルト位ケトンに蛋白質結合部(オリゴデオキシヌクレオチド)を結合したベンズアルデヒド誘導体をリジン修飾分子として開発し、標的蛋白質リジン残基を部位特異的に蛍光分子に変換することに成功した。本手法を発展させ、蛋白質相互作用の検出に応用可能な環境応答型蛍光と機能を同時に導入するリジン修飾法の開発、またリジン修飾の加速、様々な蛋白質認識部位の導入を期待し、オルト位にケトエステル、ケトアミドをもつベンズアルデヒド誘導体を新たなリジン修飾分子として開発することを目指した。項目①から②について検討を行った。項目①;蛍光に加え機能を同時に導入するリジン修飾分子の開発;これまで用いてきたジメチルアミノ基(Me2N基)を持つ環境応答型蛍光分子のオレフィン部修飾による分子の安定化と機能導入、ジメチルアミノ基以外の置換基を持つ分子によるリジン残基修飾を計画、検討した。項目②エステル、アミドで活性化したケトベンズアルデヒド構造を持つリジン修飾分子の開発;前年度見出したオルト位にケトエステルを持つベンズアルデヒドによるアミン修飾反応について、蛋白質修飾に有用性の高い構造を見出すため、種々置換基を持つケトエステル、ケトアミドを新たに合成し、化合物の構造、反応条件が反応収率、速度、生成物の選択性に与える影響について調べ、評価した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
① Me2N基を持つ蛍光分子を安定化し、機能導入を可能にするオレフィン部への置換基導入を検討中である。また、Me2N基を持つ蛍光分子の水中での弱い蛍光と異なり、水中で強い蛍光を期待してNアシル化した蛍光分子の合成、またこれを生成するリジン修飾分子の合成を検討中である。蛍光分子の酸素同族体フタルイミドは類似の蛍光特性をもつことから、アセチルアミノ基を持つフタルイミドを合成し、水中での強い蛍光を確認した。本研究の分子も同様の蛍光特性を期待する。アミノ基の修飾は機能導入にも利用できるため、蛋白質蛍光―機能導入への応用が可能と考える。これらの分子はこれまでと類似の合成経路で合成でき、リジン修飾への展開が可能と考えている。次に無置換オレフィンを持つ分子はテトラジンと反応し無蛍光だが安定な生成物を与えることを見出した。低分子を用いた反応は水含有量が増えるほど加速し、高収率となった。用いた10% DMSOを含む水中の低濃度反応(各50マイクロM)も進行した。この手法は蛋白質部位特異的修飾後、テトラジンとの生体直行型反応による機能導入へ発展可能と考え、大腸菌複製に関わるDnaA蛋白質のDNA結合ドメインを用いた反応に着手した。 ②オルトケトエステル置換ベンズアルデヒドとアミンの反応を、含有機溶媒中性緩衝液中で行い、HPLCを用いて精査した。2つの生成物を生じる反応は、有機溶媒含有率の上昇に伴い、蛍光生成物の割合、収率、反応速度が上昇した。メチルエステルに比べ、t-ブチルエステルでは同様の溶媒効果がより顕著に見られた。種々ケトエステル、ケトアミドの合成に成功し、確立した分析条件で化合物の構造、反応性相関を調べることが可能である。2つの生成物による選択的修飾が可能か調べ蛋白質修飾の有用性を検討する。
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今後の研究の推進方策 |
① Me2N基を持つ蛍光分子のオレフィン部へアセチレンなど生体直行型反応に利用可能な官能基を導入する。DNAなどの標的蛋白質結合部の導入後、機能分子と結合したアジド基などと結合させ、蛍光―機能同時導入可能なリジン修飾分子を合成する。蛋白質修飾能を検討する。 蛋白質に導入した無置換蛍光分子と機能分子を結合したテトラジンとの反応を行い、蛋白質部位特異的蛍光修飾後、テトラジンとの生体直行型反応を利用した蛋白質機能導入を検討する。 アセチルアミノ基を導入した蛍光分子を合成し、蛍光強度、環境応答性、安定性などを検討する。リジン修飾分子の合成、反応性を検討する。 ②反応の置換基効果、溶媒効果を精査するため 種々ケトエステル、ケトアミドとアミンの反応をHPLCを用いて解析する。合理的な反応機構についても検討を行い、2つの生成物にょる選択的修飾が可能な分子を探索する。蛋白質修飾の有用性を検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
申請時には設備備品の購入を申請していたが、交付金額との差を考慮し、また各種試薬、機器測定料等の値上がりがあったため購入を見送ったことが主な理由である。生じた次年度使用額は引き続き値上がりが予告されている、試薬、機器測定費に充てる計画である。
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