研究課題/領域番号 |
22K05331
|
研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
加藤 健太郎 長崎大学, 熱帯医学研究所, 助教 (50508885)
|
研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
|
キーワード | 赤痢アメーバ / Entamoeba histolytica / レクチン / Iglサブユニット / 希少糖 / リン酸化 |
研究実績の概要 |
本研究は、腸管寄生原虫である赤痢アメーバ(Entamoeba histolytica)が有し、感染に必須なレクチン(Igl)の活性制御機構を明らかにすることを目的としている。 本年度は「赤痢アメーバの培養条件により、培養液中のIglフラグメントの分子量が異なる」理由を明らかにしようと試みた。現在までにタンパク質のフォールディング、N末端側の分解、N-結合型あるいはO-結合型糖鎖修飾、シアル酸の付加数の違いではないことが明らかとなっている。そこで、タンパク質のリン酸化に着目し実験を行ったところ、アルカリフォスファターゼ処理により、培養条件間でのIglフラグメントの分子量の差がなくなるという予備的結果を得ることができた。このIglの分子量の違いは培養上清中のフラグメントだけでなく、赤痢アメーバ表面のIglでも認められることが明らかとなった。このことは、赤痢アメーバの培養条件がIglの翻訳後修飾に影響を与えることを示唆している。また、Iglに界面活性があることを見出した。 さらに、赤痢アメーバが解糖系依存的にATP産生をしていることと、Iglがガラクトースを認識することから、希少糖を含む単糖(グルコース、ガラクトース、フルクトース、アロース、プシコース)を培地中に添加し、解糖系およびIglのレクチン活性が赤痢アメーバ増殖に与える影響を調べた。その結果、ガラクトース培地中では、赤痢アメーバは接着や増殖ができなくなるものの、生存能力を維持できることが分かった。また長い間議論されてきた「赤痢アメーバがフルクトースをATP産生に利用できるのか」という問いに対し、フルクトース培地中のフルクトースが赤痢アメーバ培養後に消費されないことから、「赤痢アメーバはフルクトースをATP産生に利用できない」と結論付けることができた。希少糖が活性酸素種を介して赤痢アメーバの増殖を抑制することも明らかにした。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
赤痢アメーバの培養条件によるIglの分子量の違いがリン酸化による可能性を見出すことができた。また、このIglの分子量の違いが細胞表面上のIglに関しても認められたことから、培養条件によってIglの翻訳後修飾が異なることを明らかにできた。 また希少糖を含む単糖が、赤痢アメーバの解糖系やIglに作用し、赤痢アメーバの増殖能や生存能力に影響を与えることやそのメカニズムを明らかにでき、誌上発表できた。
|
今後の研究の推進方策 |
赤痢アメーバの培養条件に違いにより、Iglのリン酸化が変わるのか、多角的に検証していく。また、このことがIglが有する溶血・細胞傷害活性に影響を与えるか調べる。
|