研究課題/領域番号 |
22K05333
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研究機関 | 北里大学 |
研究代表者 |
長井 賢一郎 北里大学, 薬学部, 講師 (30321649)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | アムホテリシンB活性増強作用 / ネクトリアチド / 鎖状ペプチド |
研究実績の概要 |
ネクトリアチドは微生物資源より見出されたアムホテリシンB(AmB)の抗真菌活性を増強する新規環状ペプチドである。ネクトリアチドは単独では抗真菌活性を示さないため、その併用はAmBの抗真菌活性を維持したまま、投与量を削減し、その結果として副作用を減弱すると期待されている。研究代表者はすでに確立した液相合成を活用して誘導体を合成した。その中でC末、N末、チロシンの残基を保護した鎖状誘導体が1.0 μg/mLの濃度でAmBのMIC値を1.0 μg/mLから0.063 μg/mLまで低下させAmB活性を16倍増強し、ネクトリアチドより高活性を示すことを見出した。この鎖状誘導体をリード化合物に取り上げて、プローブ分子としてビオチン体の合成を検討した。N末の保護基を選択的に除去する方法を見出し、続いてN末にNヒドロキシスクシイミドPEGビオチンを利用して、N末にビオチンを導入したプローブ分子を合成した。CLSI M27-A3法およびM-38-A2法に準じて、微量液体希釈法により酵母Candida albicans ATCC90029株に対するMICを測定し、またAMPB活性増強作用についてはAmBと化合物を併用した時の真菌に対するMIC値を測定した。プローブ分子は鎖状誘導体より低活性であったが、ネクトリアチドと同程度の活性を示した。 続いて、AmBはエルゴステロールに結合することから、ネクトリアチドも脂質分子と相互作用するのではと仮定し、合成したプローブ分子を用いて脂質結合アッセイを行なった。ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノール、ホスファチジルイノシトール、エルゴステロール、コレステロールを評価した。その結果、ネクトリアチドはエルゴステロールと強い親和結合性を示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画に基づき、確立した液相合成法によりネクトリアチド誘導体を合成した。活性の目標として、鎖状誘導体が1.0 μg/mLの濃度でAmB活性を16倍増強することを1つの指標としてため、目標を達成できた。構造活性相関を参考に、ビオチンを有するプローブ分子を設計し、合成した。ビオチンを有するプローブ分子はネクトリアチドと同等以上の活性を示した。標的分子の探索が成功するためには、活性を維持したままのプローブ分子化が重要である。よって高活性なプローブ分子の発見によって、標的分子の探索に道筋をつけることができた。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き、プローブ分子を用いたネクトリアチドの高親和性タンパク質の解明に取り組む。状況に応じて、プローブ分子の再設計と合成も行う。プローブ分子を用いた研究の進行度合いによって、アフィニティービーズを合成し、標的タンパク質の精製を検討する。
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