研究課題
ネクトリアチドは微生物資源より見出されたアムホテリシンB(AmB)の抗真菌活性を増強する新規環状ペプチドである。ネクトリアチドは単独では抗真菌活性を示さないため、その併用はAmBの抗真菌活性を維持したまま、投与量を削減し、その結果として副作用を減弱すると期待されている。研究代表者はすでに確立した液相合成を活用して誘導体を合成した。その中でC末、N末、チロシンの残基を保護した鎖状誘導体が1.0 μg/mLの濃度でAmBのMIC値を1.0 μg/mLから0.063 μg/mLまで低下させAmB活性を16倍増強し、ネクトリアチドより高活性を示すことを見出した。23年度は、この鎖状誘導体をリード化合物に取り上げて、N末のCbz基を変換した誘導体と蛍光標識プローブ体の合成を検討した。先ずN末のCbz基を変換した誘導体の合成を検討した。N末のCbz基を除去した後、アミノ基に酸無水物を作用させることでN-アセチル体とN-ベンゾイル体を合成した。N-アシル体はCbz体より減弱するものの、高いAmB抗真菌活性増強作用を維持した。Fluorescein Isothiocyanate(FITC)を作用させて蛍光標識体を合成した。蛍光標識体はネクトリアチトドより高いAmB抗真菌活性増強作用を示した。蛍光標識体(64 μg/mL)をCandida albicansに添加し、37度で1時間培養後、その局在を観察した。その結果、蛍光標識体は細胞膜に局在し、酵母型より菌糸型(エルゴステロールが豊富とされる)に蛍光が観察された。またAmB(0.5 μg/mL)の併用により、細胞膜内の蛍光標識体の局在が増加した。
2: おおむね順調に進展している
研究計画に基づき、ネクトリアチド誘導体を合成した。N末のCbz基をアシル基に変換できることを見出し、アシル体は高いAmB抗真菌活性増強作用を維持した。また、この知見を元に作成した蛍光標識体を活用し、蛍光標識体がCandida albicansの細胞膜に局在することを明らかにできた。
すでに高活性なネクトリアチド誘導体を見出している。In vivo試験に向けて、誘導体について肝ミクロソームを用いた代謝安定性試験等を行い、安定性を確認する。代謝安定性に問題があれば、ペプチド等価体の設計と合成に取り組む。一方で、ネクトリアチド誘導体がエルゴステロールに関与していることが示唆された。光親和性タグ等を導入したプローブ分子を作成し、エルゴステロールが標的分子であるかを確認する。
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The Journal of Antibiotics
巻: 77 ページ: 214-220
10.1038/s41429-023-00700-4