| 研究実績の概要 |
本研究は、細菌由来のタンパク質コンパートメント(タンパク質の殻(シェル)構造で区画化された空間)の人工利用への道を拓くことを目指し、ゲノムデータから得られる多様なシェルタンパク質を遺伝的に改変または進化させることにより、標的とするタンパク質を取り込みながら自発的にシェルを形成する新たな機能性人工シェルを創成することを目的とするものである。昨年度までに、(1) 超好熱菌 Aquifex aeolicus由来のルマジン合成酵素(AaLS)の改変体の作製とその機能解析、(2) 腸内細菌の一種であるSalmonella enterica由来のバクテリアルマイクロコンパートメント(BMC)を構成するタンパク質(PduU, EutS)を基とした指向性進化を利用した人工シェルの創成を行なってきた。本年度は、(2)の研究をさらに推し進め、PduUとEutSを基とした無数の変異体ライブラリーの中から、指向性進化によって選別された集団の遺伝子配列を次世代シークエンサー(NGS)を用いて網羅的に解析した。その結果、PduU由来の配列において、E3K, Q12R, N28Y, T101Iの4つの変異が高い頻度で導入されることを見出した。さらに、E3K, Q12R, N28Yの3変異を持つPduU変異体(PduU-evol)を発現・精製してTEM解析を行った結果、PduU-eovlが直径15 nmのシェル構造を形成することを明らかにした。また、静電荷タグを付与した標的タンパク質とPduU-evolを大腸菌内で共発現することで、標的タンパク質を内包したPduU-evolシェルを形成させることにも成功した。本研究の成果は、人工タンパク質シェルの設計手法として、BMCタンパク質を基とした指向性進化が有力なアプローチであることを示すものであり、今後様々な大きさや性質をもつ人工タンパク質シェルの創出とその応用に寄与することが期待される。
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