研究課題/領域番号 |
22K05351
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
堂浦 智裕 名古屋大学, 工学研究科, 助教 (00745226)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | ケモジェネティクス / Gタンパク質共役型受容体(GPCR) / 代謝型グルタミン酸受容体 / リガンド / ノックインマウス |
研究実績の概要 |
交付申請書に記載した研究実施計画ではGタンパク質共役型受容体(GPCR)の一つである代謝型グルタミン酸受容体サブタイプ5(mGlu5)の活性をin vivoで制御可能な方法論を化学遺伝学(ケモジェネティクス)に基づき構築することとしていた。しかしながら、mGlu5と配列相同性の高いmGlu1においてマウスを用いたin vivo実験が可能な状況に至ったため、2022年度はmGlu5ではなくmGlu1を標的分子としたin vivoにおいてGPCRの機能をサブタイプ選択的かつ細胞種選択的に解析可能な方法論の開発研究を実施した。 これまでの研究から、研究代表者は野生型のmGlu1に結合して阻害する一方、T748W変異型のmGlu1に結合しても阻害しないリガンドとしてFPETを見出していた。しかしながら、FPETは野生型mGlu1に対する阻害能が少し低いことと水溶性が低いことから、マウスを用いたin vivo実験での使用に適したリガンドを再設計し、FPETと同様に野生型のmGlu1を阻害する一方でT748W変異型mGlu1を阻害しない性質を持ちつつ野生型mGlu1阻害能と水溶性が向上したリガンドとしてMPETを見出した。 また、mGlu1のケモジェネティクスを進めるためにT748W変異型mGlu1ノックインマウスの作製と系統維持を実施した。T748W変異型mGlu1ノックインマウスはCRISPR/Cas9システムを利用した遺伝子編集により作製されたが、CRISPR/Cas9システムでは目的としない遺伝子にも損傷がある場合があるため、野生型マウスとの戻し交配(バッククロス)を実施し、T748W変異型mGlu1ヘテロノックインマウスを得た。さらに、これらを交配させてT748W変異型mGlu1ホモノックインマウスを得た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究で最も重要な目標は「in vivoにおいてGPCRの機能をサブタイプ選択的かつ細胞種選択的に解析可能な方法論を開発すること」である。研究の標的分子を申請時のmGlu5からmGlu5と配列相同性の高いmGlu1に変更しているが、上記目標を実現するためのリガンドやノックインマウスのような研究材料の準備が順調であるため、本研究は順調に進展していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
「研究実績の概要」に記述したように、現在はT748W変異型mGlu1ホモノックインマウスの系統維持と実験に必要な個体数の確保を実施している。しかしながら、T748W変異型ホモノックインマウスでは個体内に発現する全てのmGlu1がT748W変異型であるため、本研究が目指すケモジェネティクスによる細胞種選択的なmGlu1の活性制御を実現するためには、ある細胞種においてのみ野生型のmGlu1を発現するコンディショナルノックインマウスの作製が必要である。現在、そのようなコンディショナルノックインマウスの作製を進めている。
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