研究課題/領域番号 |
22K05361
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研究機関 | 国立研究開発法人理化学研究所 |
研究代表者 |
松山 晃久 国立研究開発法人理化学研究所, 環境資源科学研究センター, 専任研究員 (90399444)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | タンパク質ータンパク質間相互作用 |
研究実績の概要 |
タンパク質は主に他のタンパク質と物理的に相互作用することによって機能し、相互作用の変化はタンパク質の機能および病状等の変化を引き起こす。特定のタンパク質の機能を解析するにあたり、それがどのようなタンパク質と相互作用するのかを明らかにすることは非常に重要であることから、これまで、出芽酵母の2-ハイブリッドシステムや、プルダウンとLC-MSを組み合わせた生化学的な方法など、様々な方法が開発されてきたが、どの方法にも一長一短があり、新たな解析法を開発し、解析手段の選択肢を増やすことは重要である。そこで本研究では、タンパク質-タンパク質間相互作用を解析するための方法として、近年注目されているNanoBiT発光補完法を、分裂酵母の全遺伝子ライブラリーと組み合わせることで、タンパク質の相互作用相手を網羅的にスクリーニングする実験系を開発することを目指した。 初年度は、本スクリーニング系を分裂酵母で構築するために、分裂酵母株および発現ベクターの開発を中心に行った。本実験系は深海エビのルシフェラーゼを改変したLgBiT断片と、それに低親和性で結合して機能するSmBiTペプチドとのスプリット系であるため、それぞれをORFと融合可能で、かつ、分裂酵母の染色体に挿入できるようなベクターを開発した。さらにこのような実験系で常に問題となる、タグ融合時における立体障害等の問題を可能な限り回避できるように、遺伝子をLgBiTと融合させる際にORFの5'末端にLgBiTを融合させるタイプの発現ベクターと、3'末端に融合させるタイプのベクターを別々に用意し、これらを同時に1つの株に発現できるようにした。また、これらのベクターを染色体に挿入して融合タンパク質を発現できるように、CRISPR/Cas9のシステムを用い、lys1およびarg3遺伝子のORF内に変異を有する株を作製した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、単なるNanoBiTを用いた2つのタンパク質間の相互作用の検出系というだけではなく、融合タンパク質の立体配置により起こる問題を解消するために、LgBiTを対象のタンパク質に対して2つの異なる配置で融合させることを目指している。2つの別々の発現ベクターを用いて同一の細胞内で、しかもそれぞれを染色体挿入型として発現できるようにするためには、専用の酵母株と発現ベクターをそれぞれ新たに2セット用意しなければならないが、過去に開発したleu1を標的とするベクターのように、lys1およびarg3を標的として染色体に挿入できるタイプのベクターが開発できた。また、これらのベクターを使用できる宿主となる株もCRISPR/Cas9系を用いて作製でき、実際にこれらの新たに開発した宿主-ベクター系で外来遺伝子が発現できることを確認できたことから、順調に研究が進んでいると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
NanoBiT系はベイトとなるLgBiT融合タンパク質と、プレイとなるSmBiT融合タンパク質との発現が必要であるが、今後は、過去に作製した分裂酵母の全遺伝子ライブラリーを用いて、全遺伝子をSmBiTと融合させ、プレイとして発現できるように発現ライブラリーを作製する予定である。全遺伝子数が約5,000であるため、できるだけ効率よくライブラリーの作製を行うには、発現ベクターへのクローニングの成功率を少しでも上げる必要がある。理想的には大腸菌の形質転換体コロニーを1つ取ってプラスミドDNAを調製するだけで、各遺伝子の発現ベクターの取得に成功するのが望ましい。そのため、SmBiT発現ベクターに様々なギミックを取り入れていく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
NanoBiT系では非常に高価なルシフェラーゼの基質を用いるが、初年度は発現ベクターとその宿主の開発に多くの時間を割いたため、予定よりもルシフェラーゼアッセイを行う回数が少なくなった。また、学会もコロナ禍でオンライン開催となったため、出張の必要がなかった。次年度は全遺伝子の発現ベクターへのクローニングだけでなく、スクリーニング前の予備実験も多く行うため、これらに多くの予算を使用する予定である。
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