研究課題
本研究は、GLUT阻害剤や解糖系を標的とした小分子化合物を用いて、グルコース非依存性がん細胞に対する作用メカニズムを明らかにし、それらの抗がん剤としての有用性をin vitroで検証する。本研究を通して、グルコース非依存性がん代謝機構を理解し、制御することを目的とする。本年度は、グルコース非依存性がん細胞の代謝制御機構を明らかにする目的で、グルコース非依存性がん細胞(MG-63細胞)とグルコース依存性がん細胞(HeLa細胞)のグルコース欠乏(24時間および48時間処理)によるプロテオーム変動を2D-DIGEで解析した。1,690スポットを定量し、いずれかの条件で有意に変化したタンパク質は192スポットあった。両細胞間で代謝関連タンパク質やミトコンドリア局在タンパク質の発現変動に違いが認められ、両細胞でグルコース欠乏による代謝の応答が異なることが示唆された。そこで、さらに詳細に調べるために、同様の条件でMSベースのショットガン定量プロテオーム解析を行った。その結果、定量値の付いた約5,000タンパク質を取得することができ、本解析でも両細胞でグルコース欠乏により代謝関連タンパク質の発現変動が異なることが確認された。
2: おおむね順調に進展している
本年度は、グルコース非依存性がん細胞とグルコース依存性がん細胞のグルコース欠乏によるタンパク質変動を2DベースおよびMSベースのプロテオーム解析で調べた。グルコース非依存性がん細胞特異的に変化する複数のタンパク質を同定することができ、当初の計画通りおおむね順調に進んでいる。
今後は得られたプロテオームデータを基に、グルコース非依存性がん細胞の代謝制御機構やGLUT阻害剤の作用解析を進める。また、グルコース非依存性がん細胞に選択的に作用する化合物の探索も進めていく。
当初計画していた消耗品費用が下回り、また旅費の使用もなかったため、次年度使用が生じた。これらの費用は、次年度消耗品費や旅費として使用する予定である。
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