研究課題/領域番号 |
22K05369
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研究機関 | 宮崎大学 |
研究代表者 |
佐伯 雄一 宮崎大学, 農学部, 教授 (50295200)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | ダイズ根粒菌 / 温帯 / 熱帯 / 普通畑 / 水田転換畑 / Bradyrhizobium / フィリピン |
研究実績の概要 |
筆者は、ダイズ根粒菌の群集生態について、根粒から菌株を分離し感染根粒菌群集と環境傾度との関連性を明らかにしてきた。 一方で、土壌中の根粒菌生態は有効な解析手法がないことから不明な点が多く、根粒菌生態を利用した共生窒素固定の有効活用のための大きな課題となっている。 本研究では、ITS領域をターゲットとしたアンプリコンシークエンス解析を駆使し、土着根粒菌群集構造と感染根粒菌群集構造を、分子・数理生態学的に比較解析し、高窒素固定能の根粒菌の農業利用のための知見とする。 2023年度は、ダイズ(Bragg, CNS, Hill)を北海道農研センター・宮崎大学・琉球大学・フィリピンCentral Luzon State Univ.(CLSU)の土壌でポット栽培し、着生した根粒からゲノムを抽出し、Bradyrhizobium属16S-23S rRNA gene ITS領域をターゲットとしたアンプリコンシークエンス解析を行なった。得られたデータからAmplicon sequence variant (ASV)と構築した系統樹から得られた種構成を解析した。その結果、北海道ではB. japonicum USDA123系統、宮崎の普通畑ではB. japonicum USDA6系統、宮崎の水田転換畑ではB. diazoefficiens、琉球大学ではB. elkanii、CLSU普通畑ではB. yuamingense、水田転換畑ではB. elkaniiとB. yuamingenseが優占していた。ASVを元にした群集構造の比較では、栽培地点による明確な差異が認められた。また、日本の水田転換畑にはB. diazoefficiens、CLSUの水田転換畑にはB. yuamingense という別の種の優占が確認され、温帯水田転換畑土壌とは異なる根粒菌群集構造の形成が確認された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
日本とフィリピンのダイズ畑における優先根粒菌種を定めることができ、地域に特異的な種構成となっていた。 特に、日本の水田転換畑では、完全脱窒能を有しているBradyrhizobium diazoefficiensの優占がよく知られているが、熱帯では水田転換畑においても異なる種であるB. yuamingenseの優占が明らかとなった。また、脱窒活性をほとんど示さないB. elkaniiも水田転換畑で頻繁に検出された。このように熱帯土壌におけるダイズ根粒菌の特異的な群集構造形成を明らかにした。
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今後の研究の推進方策 |
各地域におけるダイズ根粒菌の優占種を同定できた。特に日本の水田転換畑には完全脱窒能を有するB. diazoefficiensが優占していることが明らかにされており、フィリピンの土壌でも同様の現象が期待された。しかしながら、CLSUの普通畑にB. yuamingenseが、水田転換畑にB. elkaniiとB. yuamingenseが優占しており、熱帯においては日本の根粒菌分布とは異なる現象が検出された。根粒菌の土着化/優占化を明らかにするために、土壌中の群集構造解析を行い、感染根粒菌群集構造との比較解析、およびこれらの菌株の環境適応性などの解析を進めていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
最終的に76円の未使用額が生じた。今後、研究を進めるため適正な研究費使用を進めていく。
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