研究課題/領域番号 |
22K05402
|
研究機関 | 長岡技術科学大学 |
研究代表者 |
高橋 祥司 長岡技術科学大学, 工学研究科, 教授 (90324011)
|
研究分担者 |
柴田 公彦 福島工業高等専門学校, 化学・バイオ工学科, 准教授 (10369928)
|
研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
|
キーワード | D-アミノ酸 / バクテリア / 乳酸菌 / 高分泌生産 / 酵素スクリーニング法 / D-アミノ酸オキシダーゼ |
研究実績の概要 |
近年、医薬品原料として有用なD-アミノ酸の多様な生理効果が報告され、D-アミノ酸の広範な応用的利用が期待されている。また、細菌が多様なD-アミノ酸を細胞外に生産していることが明らかになってきた。申請者らは、高い安定性と活性を有し、かつ多様なD-アミノ酸に作用する酵素D-アミノ酸オキシダーゼ(DAO)を見いだした。そこで本研究では、申請者が見出した高活性・高安定性・広基質特異性DAOを用いたハイスループットな細胞外D-アミノ酸生産細菌のスクリーニング法を開発し、高いD-アミノ酸細胞外生産能を有する細菌株を単離・同定し、その生産機構を明らかにし、多様なD-アミノ酸の発酵生産法の開発や広範な応用的利用の基盤を築くことを目的とした。 本年度は、環境試料から多数の細菌株を単離し、これら単離菌株のD-アミノ酸分泌生産に関して以下の成果を得た。環境試料から、3種類の培地を用いて、計357株の細菌株を単離した。また、培養液上清のDAOを用いた酵素法による定量法を開発した。開発したD-アミノ酸の酵素定量法を用いて、全単離菌株の培養液上清のD-アミノ酸を測定したところ、高いD-アミノ酸分泌生産能を示す細菌株を6株得た。今後、D-アミノ酸高分泌生産株が生産するD-アミノ酸の種類と量を明らかにするとともに、培養条件がそのD-アミノ酸分泌生産能に及ぼす影響を明らかにする予定である。また、D-アミノ酸高分泌生産株のゲノム配列を明らかにし、D-アミノ酸生合成酵素を同定し、その酵素学的緒特性を明らかにする予定である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
新潟県内の様々な環境試料や発酵堆肥を細菌株の単離源とし、抗真菌剤を含むLB培地、NB培地とSCD培地の3種類の寒天培地を用いて培養し、コロニーのサイズ、形態や性状の相違をもとにして細菌株を単離したところ、LB培地で150株、NB培地で95株、SCD培地で112株の計357株を単離した。培養液上清のD-アミノ酸を、好熱性真菌Rasamsonia emersonii YA株由来DAO、西洋ワサビペルオキシダーゼと発色基質として4-アミノアンチピリンを用いた酵素学的な測定方法を開発した。単離した細菌株を単離に使用した培地の液体培地で培養し、培養液上清のD-アミノ酸濃度を開発した酵素法により検出したところ、吸光度/細胞濁度が1.0以上を示す高い濃度のD-アミノ酸を生産する細菌株をLB培地で2株、SCD培地で4株得た。
|
今後の研究の推進方策 |
本研究は順調に進展していることから、今後は単離菌株の同定と分泌生産されるD-アミノ酸の同定とD-アミノ酸生産機能の基礎的知見を得るために、以下の項目について検討する予定である。 (1)単離菌株の同定:単離菌株の16S rRNA遺伝子配列を明らかにするとともに、API 20などの菌株の生化学的表現形を解析するキットを用いて単離菌株の同定を行う。 (2)培養液上清のD-アミノ酸の同定:細菌株の培養液上清に存在するD-アミノ酸の種類と含有量をHPLCを活用して同定する。 (3)D-アミノ酸分泌生産に及ぼす培養条件の解析:培地組成、培養温度やpHが単離菌株によるD-アミノ酸の分泌生成に及ぼす影響を調査する。 (4)D-アミノ酸生合成酵素の単離と解析:単離菌株のゲノム配列を解析し、D-アミノ酸の生合成に関与する可能性のあるアミノ酸ラセマーゼやD-アミノ酸アミノトランスフェラーゼ遺伝子を単離して大腸菌における発現系を開発する。また、発現産物の基質特異性、補因子、および酵素反応速度論を解析する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
想定よりも消耗品の金額が多くなる可能性が考えられたため、やむを得ず科研費で購入を考えていた設備備品の一部の購入を取り止め、他の研究資金での購入に切り替えたり、効率は悪くなるが別の設備備品で補った。それにより、当初購入を想定していた設備備品は購入できないが、余剰資金が生じた。生じた余剰資金は、次年度の消耗品費として使用する予定である。
|