研究課題/領域番号 |
22K05406
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研究機関 | 三重大学 |
研究代表者 |
國武 絵美 三重大学, 生物資源学研究科, 准教授 (30800586)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | Aspergillus nidulans / 糸状菌 / カーボンカタボライト抑制 / セルラーゼ / プロテアーゼ / cAMP依存性プロテインキナーゼ / 転写制御 |
研究実績の概要 |
本研究はAspergillus nidulansにおいて見出したcAMP依存性プロテインキナーゼ(PkaA)依存的カーボンカタボライト抑制の分子機構を解明するため、PkaAの下流で働くと考えられる転写因子Aの機能を明らかにすることを目的とする。この転写因子AはHeat shock factor-type DNA結合ドメインを持つ。そこで、転写因子Aの基本的な機能についての知見を得るため、熱ストレス応答に関して解析した。転写因子A破壊株において高温での生育が低下することは既に明らかであったため、Heat shock proteinをコードする遺伝子の転写解析を行った。その結果、標準株では高温条件にシフトした際に発現量が上がる一方で、転写因子A破壊株では一部の遺伝子において発現量の上昇率の低下が見られた。これより、転写因子Aが熱ストレス応答に部分的に関与することが示唆された。また、他の種々のストレスに対する応答性と分生子形成に与える影響を調べた結果、転写因子A破壊株で分生子数が減少し、塩ストレス条件下で生育が低下することが明らかとなった。 転写因子AはPkaAによるリン酸化により機能が制御されていると考えられている。そこで推定PKAリン酸化部位変異体を作出し、表現型を解析した。転写因子Aはプロテアーゼ生産の負の制御因子でもあるため、セルラーゼ生産性だけでなく、プロテアーゼ生産性についても調べた。プレートアッセイを行った結果、1つのアミノ酸のアラニン置換体において各酵素生産性の変化が見られた。以上より、このアミノ酸のPkaAによるリン酸化が、セルラーゼやプロテアーゼ生産の制御に関与していることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
転写因子Aの熱ストレスや塩ストレスへの影響や分生子形成への関与が示された。また転写因子Aの機能に重要なアミノ酸を特定することが出来た。以上よりおおむね順調に計画が進んでいると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
転写因子AがPkaAの基質となることを証明するため、組換えPkaAを作製しin vitroにおける転写因子Aのリン酸化解析を行う。また、糸状菌細胞内での転写因子Aのリン酸化を解析するためタグを付加した転写因子Aを発現する株の作製を行う。これらは今年度も取り組んでいたが、進捗が遅かったので継続して行っていく。また、複数のリン酸化部位変異体を作出し、転写因子Aの機能制御に重要なアミノ酸の特定を引き続き行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
諸事情により学会等に参加できなかったため出張旅費に要する支出がなかった。また、推定リン酸化部位変異体の解析に若干の遅れがあるため、試薬等の購入に充てる費用が一部未使用となった。この費用は次年度の試薬等の消耗品の購入、出張費に充てる計画である。
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