現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度までの研究成果(基盤研究C : 19K05776)から、β-hLysがL-Argより生合成されることを見出し、またβ-hLys生合成に関与する7つの酵素遺伝子を見出した。本年度はこれら7つの遺伝子の各破壊株が蓄積する生合成中間体の探索を進めた。その結果、L-Argの代謝物であるagmatineをputrescineに変換するagmatinaseをコードするorf14遺伝子の破壊株において、β-hLysの前駆体であるα-hLysの末端アミノ基がグアニジド化された化合物に一致する生合成中間体が観察された。そこで、orf14遺伝子破壊株の培養上清を基質に、Orf14組換え酵素を用いたin vitro反応を行ったところ、α-hLysを生成することが判明した。 RMのPhe誘導体における2箇所の水酸化を触媒する酵素遺伝子を探索したところ、興味深いことに、本遺伝子群にはPhe-4-水酸化酵素に相同性を示す酵素遺伝子がorf8遺伝子一つしか存在しなかった。そこでOrf8組換え酵素を用いたin vitro反応を実施した。Orf8は従来型Phe水酸化酵素群と同様に、5,6,7,8-tetrahydropteridine(BH4)を補酵素とする水酸化酵素であると予想されたことから、従来型Phe水酸化酵素の反応組成を参考に反応を行ったところ、Pheを基質に3位と5位を段階的に水酸化することが判明した。次に、2回の水酸化反応に関わるアミノ酸残基を同定するために、従来型Phe水酸化酵素のX線結晶構造とのモデリング解析を行ったところ、基質であるPheのベンゼン環近傍領域に、既存のPhe水酸化酵素とは異なる活性残基を有することも見出すことができた。
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