研究課題/領域番号 |
22K05428
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
山篠 貴史 名古屋大学, 生命農学研究科, 准教授 (00314005)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 概日リズム / 擬似レスポンスレギュレーター / ユビキチン分解経路 |
研究実績の概要 |
生物時計の自律振動における固有周期は概日リズムの位相を昼夜の時間変化に同調させるために必須の役割を果たしている。植物の概日時計システムは転写制御因子をコードする中心振動体遺伝子による負のフィードバックループ回路を基盤とし、細胞内の多くの遺伝子発現にみられる概日リズムの生成を支えている。中心振動体タンパク質の半減期は、概日リズムの位相特性や固有周期を規定する上で重要な役割を果たしていると考えられる。シロイヌナズナの概日時計を構成する擬似レスポンスレギュレーター(Pseudo Response Regulator, PRR)ファミリーは明期から暗期にかけて、PRR9->PRR7->PRR5->PRR3->PRR1の順番にリズミカルに発現誘導されることが知られている。PRRファミリーはN末端に二成分制御系タンパク質に保存されている環境センサーからの情報をキャッチするレシーバー様のドメイン(Receiver Like Domain, RLD)とC末端に核移行と標的遺伝子のプロモーター結合を担うCCTドメインから成り立っているが、RLDはレシーバーとしての機能に必須のアスパラギン酸残基がグルタミン酸に置換されてしまっていてセンサーキナーゼからのリン酸基転移反応には関与できないのでPRRにおけるRLDの役割は不明であった。本研究ではRLDを欠損したPRR7を作製しこの変異型タンパク質の性質を解析したところ、分子間の二量体形成活性を失うとともに半減期が上昇することが明らかになった。現在、PRR7のRLDをシロイヌナズナにおいてレスポンスレギュレーターとして機能するARR1のレシーバードメインやエチレン受容体ETR1に保存されたレシーバードメイン、PRR7以外のPRRファミリーのRLDとの置換体を作製し、これらを用いてRLDが中心振動体機能に如何なる役割を担っているかを解析している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
LUCレポーター遺伝子を指標とした概日リズムの自動測定実験では、芽生え植物よりもロゼット植物の方が安定した概日リズムを検出することができることがわかったが、スループットの問題で多数のロゼット植物を同時に同一条件で比較解析することは困難である問題に直面している。また、PRR7のRLD改変体の遺伝学的な解析ではprr9 prr7 prr5三重変異体を利用したが、遅咲きとなる表現型を有するためこれを親株とする形質転換体の作製には想定以上の時間がかかっている。来年度はこれらの問題を克服するための、化学発光測定機器の改良とprr7単独変異体の利用などを検討することとする。一方で、形質転換体の作製に時間がかかる期間を利用して、本年度はPRR7のRLD改変体の解析だけでなく、RLDと相互作用するタンパク質をY2H法によって検索することができた。これからも研究機関を当初の予定に限定せず柔軟に再構成していきたい。
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今後の研究の推進方策 |
PPR7が標的とするCCA1/LHYの転写は暗期に誘導され、PRR7が発現する明期に抑制される。PRR7はin vivoでCCA1/LHYの転写開始点からその上流約300bpまでの制御領域に特異的に結合する。シロイヌナズナ野生株Col-0においてCCA1/LHYプロモーター近傍のヒストンH3(特に9番目のリジン残基[K9])は転写が誘導されている暗期にはアセチル化レベルが高いが、転写が抑制される明期には脱アセチル化されており、クロマチン構造が日周レベルで変動していることが示唆された。この知見に基づき、CCA1/LHYプロモーター近傍のヒストンH3のエピゲノムマークの推移をK7Acに対する特異抗体を用いたChIP assayにより解析し、openクロマチンから抑制クロマチンの形成、維持、解除の変化を日周期レベルで明確にする。PRR7のRLDを改変した変異型PRR7を導入した形質転換体を用いて同様の解析を実施し野生型と比較解析することにより、RLDのPRRタンパク質の転写抑制活性に果たす役割を理解する。PRR7RLDを特異的に認識する未知のE3ユビキチンリガーゼの存在や、ヒストン修飾酵素あるいはクロマチンリモデリング複合体サブユニットとPRR7とのRLD依存的なprotein-protein相互作用を視野に入れ、PRR7RLDと相互作用するタンパク質をY2H法およびIP-MS解析両面から同定する。RLDに部位特異的変異を導入することにより、PRRの分子安定性と転写抑制活性を人工的に改変し、概日リズムの固有周期を調節することのできる制御系を構築する。これらの生化学的、遺伝学的解析により、「PRRの分子活性の継続時間」を規定する分子機構を明らかにし、これを植物時計の振動回路モデルに適用することにより「概日リズムの周期長」の調節機構を理解する。
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次年度使用額が生じた理由 |
LUCレポーター遺伝子を指標とした概日リズムの自動測定実験では、芽生え植物よりもロゼット植物の方が安定した概日リズムを検出することができることがわかったが、現状ではスループットの問題で多数のロゼット植物を同時に同一条件で比較解析することは困難であった。また、PRR7のRLD改変体の遺伝学的な解析ではprr9 prr7 prr5三重変異体を利用したが、遅咲きとなる表現型を有するためこれを親株とする形質転換体の作製には想定以上の時間がかかっている。これらの問題に対応するため、化学発光測定機器の改良とprr7単独変異体の利用などを検討しており、次年度使用額に計上させていただいた。
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