研究課題/領域番号 |
22K05435
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研究機関 | 山形大学 |
研究代表者 |
宮城 敦子 山形大学, 農学部, 准教授 (00645971)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | シュウ酸 / イネ / CE-MS / ICL / エゾノギシギシ |
研究実績の概要 |
本研究課題は作物におけるシュウ酸含量の低減を最終目標として、植物のシュウ酸蓄積機構の解明を目指すものである。 これまでに、我々はシュウ酸蓄積候補遺伝子の1つであるICLに関して、夜間(暗所)におけるシュウ酸蓄積に関与している可能性をRT-PCRおよびGUS染色による発現解析により示しており、また、ICL阻害剤であるイタコン酸を用いた解析でも暗所でのシュウ酸蓄積が抑制されることも示した。そこで、令和5年度はICLをノックダウンしたイネicl系統を作出し、出穂直後の止葉のサンプリングを行った。 一方で、他の植物、特に高シュウ酸植物においてもイネと同様に明暗でシュウ酸蓄積に寄与する経路が異なるかどうかは不明であった。そこで、我々はタデ科の高シュウ酸植物であるエゾノギシギシ(Rumex obtusifolius L.)を用いてイタコン酸を用いた生化学的実験を行った。すなわち、エゾノギシギシの新生葉実験系を用いてイタコン酸によるICL阻害実験を行い、CE-QQQ-MSを用いてシュウ酸含有量を測定した。その結果、イタコン酸を3週間与えた植物体の葉において、暗所ではシュウ酸蓄積量が激減したのに対し、明所ではほとんどシュウ酸含有量が減少しなかった。加えて、育成時の照度が低い場合には、明所でもイタコン酸によりシュウ酸蓄積量が抑制されることが明らかとなった。これらのことから、単子葉植物のイネだけではなく双子葉植物の高シュウ酸種でも暗所と明所でシュウ酸蓄積経路が異なること、また、光量によってシュウ酸蓄積に関わる合成経路の寄与率が異なることが本研究により初めて明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度の成果である、イネの葉におけるシュウ酸蓄積量の品種間差や他の代謝物含量との相関性、GWASの結果を論文として発表することができたため。 また、シュウ酸蓄積候補遺伝子に関わるイネ変異体を作出してサンプリングを行うことができたことに加え、イタコン酸処理実験によって他の植物においてもシュウ酸合成経路が昼夜で異なることを証明することもでき、光量や光質がシュウ酸合成経路の寄与率に影響する可能性も見出したため。
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今後の研究の推進方策 |
作出したシュウ酸蓄積候補遺伝子の変異体の葉における代謝解析を行うことにより、候補遺伝子がシュウ酸蓄積に及ぼす影響を明らかにする。 光の明るさによって植物のシュウ酸蓄積経路が異なることが示唆されたため、今後は照度や光質がシュウ酸蓄積に及ぼす影響を明らかにする。また、イネの染色体部分置換系統のメタボローム解析を進めることにより、明所におけるシュウ酸蓄積に寄与する経路の特定を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
予算申請時よりも消耗品の価格が大幅に上昇したことにより、本来購入すべきCE-MS消耗品の購入ができなかったため。それにより生じた次年度使用額は次年度交付額と合算のうえCE-MS消耗品の購入に使用予定である。
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