本研究の目的は、浸透圧(乾燥)ストレスを克服できる生物に幅広く存在する新規なタンパク質の構造と機能をつまびらかにし、生物界に普遍的に存在するストレス耐性分子基盤に関する知見を得ることである。 昨年度に見出した、厳しい乾燥に耐える生物が共通して有していながら構造及び機能が未知であるタンパク質Aについて、さらなる解析をこころみた。このタンパク質Aは、構造が既知のタンパク質との配列類似性が低いいいっぽうで、多様なドメイン・界の生物にホモログが見つかることがわかっている。また、これを有する生物の中には厳しい乾燥に強いとされる動物や植物、バクテリアが多く存在していることから、タンパク質Aが乾燥耐性に寄与している可能性がある。 本年度は昨年度にタンパク質Aの構造決定に繋がった結晶化条件以外から得られた結晶や変異体の結晶を用いて、X線結晶構造解析により、活性中心構造の異なる複数の立体構造を決定した。また、昨年度見出した本タンパク質の脱リン酸化活性についてさらに広範な基質スクリーニングをするとともに、タンパク質Aとアミノ酸配列類似性を示す放射線耐性細菌由来タンパク質Bについても脱リン酸化活性を測定した。タンパク質Bはタンパク質Aと同じく、脱リン酸化活性を示した。植物由来のホモログタンパク質の組換え体発現も植物や大腸菌を用いて試みているが、MBPタグ付きのものが大腸菌からわずかに得られているのみである。 クマムシ由来タンパク質Aについて得られた結果をまとめ、現在論文投稿中である。
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