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2022 年度 実施状況報告書

超硫黄分子がもたらす細菌の新規薬剤耐性機構の解明

研究課題

研究課題/領域番号 22K05443
研究機関熊本大学

研究代表者

小野 勝彦  熊本大学, 大学院生命科学研究部(医), 助教 (80573592)

研究期間 (年度) 2022-04-01 – 2025-03-31
キーワード超イオウ / システインパースルフィド / 抗菌剤 / βラクタム剤 / 薬剤耐性 / 緑膿菌
研究実績の概要

システインパースルフィドはアミノ酸であるシステインのチオール基(-SH)に過剰にイオウが付加した分子であり、近年様々な生理活性を持つことが明らかになっている。最近、我々は細菌が産生するシステインパースルフィドが、βラクタム系抗菌剤を強力に分解することで、薬剤耐性に寄与することを明らかにした(Ono et. al., ACS Chem. Bio., 2021)。システインパースルフィドと反応した薬剤は、βラクタム環が開環しイオウが付加した、βラクタムカルボチオ酸という新規化合物であり、菌体内で産生した後、菌体外へと積極的に排出されることが分かっている。しかしながら、その反応機構の詳細や薬剤耐性化との関連性には不明な点が数多く残されている。そこで本研究課題では、システインパースルフィドによるβラクタム系抗菌剤の反応機構の詳細な解析を行い、この新規薬剤耐性化機構の詳細な解明を目的としている。
2022年度は、細菌の薬剤耐性とシステインパースルフィド量の相関の検討を行うために、研究室で保持する薬剤耐性緑膿菌の薬剤耐性化強度とシステインパースルフィド量を定量し、それらの相関関係を検討した。薬剤耐性菌の薬剤耐性化強度の検討では、βラクタム系(ピペラシリン、メロペネム)のみならず、アミノグリコシド系(カナマイシン)やテトラサイクリンキノロン系(オフロキサシン)に対する感受性を微量液体希釈法を用いて検討した。また、システインパースルフィドの定量はβ-(4-hydroxyphenyl)ethyl iodoacetamide (HPE-IAM)誘導体化による質量分析を用いた。
その結果、高度に薬剤耐性化した株において、特に高いシステインパースルフィド量と反応産物であるカルボチオ体産生が確認された。このことから、薬剤耐性化とシステインパースルフィド量には相関関係が認められた。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

2022年度に予定していた薬剤耐性菌の薬剤耐性強度とシステインパースルフィド量の相関の検討においては、概ね解析は終わっており、良好な結果が得られている。さらに相関関係を検討するために、より多くの薬剤耐性菌のシステインパースルフィド量と反応産物であるカルボチオ体の定量を行い、薬剤耐性におけるシステインパースルフィドの役割を明らかにしていく。

今後の研究の推進方策

今後は、これまでに検討された大腸菌や緑膿菌以外の菌種を用いた検討を行い、システインパースルフィドによる薬剤耐性化機構の普遍的な役割を明らかにする。
これまでシステインやシステインパースルフィドがβラクタムを不活性化することは知られていたが、βラクタム以外の抗菌剤には無効であることが分かっていた。我々は新たに非βラクタム系抗菌薬に対してもシステインが不活性化を引き起こし、さらにその反応産物が細菌内で生成されることを見出した。今後はこの薬剤における不活性化機構の解明も行うことで、βラクタムだけではなく幅広い薬剤に対する耐性化にシステインやシステインパースルフィドが関与していること明らかにしていく予定である。

次年度使用額が生じた理由

今年度実施した薬剤耐性菌におけるシステインパースルフィド定量をサンプル数を増やして実施するため、予算を次年度に繰り越した。

  • 研究成果

    (4件)

すべて 2022 その他

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (1件) (うち国際学会 1件) 備考 (1件)

  • [雑誌論文] Subtilase cytotoxin from Shiga-toxigenic Escherichia coli impairs the inflammasome and exacerbates enteropathogenic bacterial infection2022

    • 著者名/発表者名
      Hiroyasu Tsutsuki,Tianli Zhang,Kinnosuke Yahiro,Katsuhiko Ono,Yukio Fujiwara,Sunao Iyoda,Fan-Yan Wei,Kazuaki Monde,Kazuko Seto,Makoto Ohnishi,Hiroyuki Oshiumi,Takaaki Akaike,Tomohiro Sawa
    • 雑誌名

      iScience

      巻: 25 ページ: 104050

    • DOI

      10.1016/j.isci.2022.104050

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Structural Determination of the Nanocomplex of Borate with Styrene-Maleic Acid Copolymer-Conjugated Glucosamine Used as a Multifunctional Anticancer Drug2022

    • 著者名/発表者名
      Waliul Islam,Hiroyasu Tsutsuki,Katsuhiko Ono,Ayaka Harada,Kozo Shinozaki,Takuro Niidome,Jun Fang,Tomohiro Sawa
    • 雑誌名

      ACS Applied Bio Materials

      巻: 5 ページ: 5953-5964

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [学会発表] Identification and quantification of β-lactam ring opened carbothioic S-acids mediated by cysteine hydropersulfide in bacteria2022

    • 著者名/発表者名
      Katsuhiko Ono, Hiroyasu Tsutsuki, Tianli Zhang, Takaaki Akaike, Tomohiro Sawa
    • 学会等名
      The 12th International NO Conference & The 22nd NOSJ
    • 国際学会
  • [備考] 熊本大学生命科学研究部微生物学講座HP

    • URL

      https://www.microbio-ku.jp/

URL: 

公開日: 2023-12-25  

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