研究課題/領域番号 |
22K05453
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研究機関 | 鳥取大学 |
研究代表者 |
一柳 剛 鳥取大学, 農学部, 教授 (00302240)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 糖鎖合成 / リポ多糖 / リポオリゴ糖 / 磁気粒子 / L-グリセロ-D-マンノヘプトース / 3-デオキシ-D-マンノオクツロン酸 |
研究実績の概要 |
グラム陰性細菌は細胞外膜にリポ多糖(LPS),リポオリゴ糖(LOS)と呼ばれる複合糖脂質を産生する。これらは免疫に関係する重要な分子である。共同研究者により細菌性髄膜炎の原因菌であるNeisseria属細菌のLPS/LOSの糖鎖部分を認識するヒト抗体の存在が明らかにされた。しかしそのエピトープは未解明のままである。本研究では,申請者が取り組んでいるLPS/LOSの構造普遍領域糖鎖(コア糖鎖)の精密化学合成の手法を基盤に,Neisseria属LOSのコア糖鎖ライブラリーを作成し,上記エピトープ,殺菌性抗体産生に必要な最小構造の解明と,コア糖鎖の自然免疫における機能を明らかにする。 研究実施計画のうち、令和5年度はコア糖鎖ライブラリーの拡充およびコア糖鎖ー磁気粒子コンジュゲートの作成を中心に取り組んだ。コア糖鎖では、Escherchia属LPSの酸性内部コア五糖、およびHaemophilus属LPSの酸性コア四糖の精密化学合成を達成した。前者の合成では、Heptoseの6,7位のジオールに対する位置選択的グリコシル化に取り組んだ結果、溶媒が位置選択性に大きく影響することを突き止めたが、完全な7位位置選択性を得るための条件を見いだすまでには至らなかった。コア糖鎖ー磁気粒子コンジュゲートの作成では、4,5分岐したKdoを有する三糖を使用し、従前から使用しているチオグリコール酸以外のリンカーについて検討を行った。その結果、糖鎖の還元末端アリル基のオゾン酸化を経由する還元アミノ化を利用する変換は、C1カルボン酸エステルとのラクタム環形成が問題となるためリンカー導入方法に適さないこと、アルデヒドからPinnick酸化を経由して、窒素官能基を有するスペーサーまたはリンカー分子との縮合が適していることを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
実施計画にあるNeisseria属、Escherichia属、Hemophilus属LPS内部コア糖鎖合成のうち、連続3分岐型以外の合成を完了した。有機溶媒、試薬価格の高騰に伴い、連続3分岐型糖鎖に向けた糖鎖ユニット大量合成計画の一部見直しの必要が生じたため遅れが生じている。磁気粒子コンジュゲートの作成は多様なリンカー導入に向けた方法論が確立できている。またマクロファージ活性化能の検証では、合成糖鎖の一部について検証を開始している。 以上の理由から進捗状況を「おおむね順調に進展している」と評価する。
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今後の研究の推進方策 |
未達成となっている連続3分岐型内部コア糖鎖の精密化学合成に向け、分岐構造構築時の糖鎖ユニット縮合順を検討し、最適な構築手順の確立に取り組む。合成糖鎖-磁気粒子で選抜したヒト抗体を使用して天然LPSとの結合実験の実施をすすめる。これまでに達成したNeisseria属、Escherichia属、Hemophilus属LPS内部コア糖鎖の部分糖鎖の合成をすすめ、部分糖鎖でのマクロファージ活性化の検証に取り組む。
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