研究課題
Orobancholは多くの植物の根分泌物に検出される代表的なストリゴラクトンである。すでに、ストリゴラクトンの共通の生合成前駆体であるcarlactonoic acid(CLA)がCYP722Cによって18-oxo-CLAに酸化され、これが自発的に環化してorobancholとジアステレオマーであるent-2′-epi-orobancholを生成することを明らかにした。本研究の初年度にはorobanchol のみを分泌するトマトから、18-oxo-CLAをorobancholに立体選択的に環化する、stereoselective ring-formation factor(SRF)と名付けたタンパク質を見出した。本年度は、SRF遺伝子をノックアウトしたトマトを作出し、その根分泌物中にorobancholだけでなくent-2′-epi-orobancholも検出したことから植物体でのSRFの機能を確認した。さらに、AlphaFold2によりSRFタンパク質の立体構造を予測し、基質である18-oxo-CLAとドッキングシミュレーションした。活性に関わると考えられるいくつかのアミノ酸残基が予想され、それらを個々に置換した変異タンパク質を調製し酵素活性を調べた結果、活性に必須の複数のアミノ酸残基を特定した。一方、タバコにはorobancholのみを生産する種とent-2′-epi-orobancholも生産する種が知られている。トマトと異なりタバコにはSRFをコードする遺伝子が4つあり、種によってSRF遺伝子の発現プロファイルに違いが認められた。タバコの種における18-oxo-CLAの環化の違いに対するそれぞれのSRFの機能の解析に着手した。
2: おおむね順調に進展している
トマトにおいてSRF遺伝子をノックアウトし植物体での機能を確認した。さらに、SRFタンパク質の立体構造ならびに活性に必須のアミノ酸残基を特定した。一連の成果を論文に取りまとめ投稿した。トマトで得た知見をタバコに応用し、タバコの種における18-oxo-CLAの環化様式の違いの解析に着手した。
栽培条件によるタバコのSRF遺伝子群の発現パターンを解析するとともに、根から分泌されるorobancholおよびent-2′-epi-orobancholを分析する。また、異種発現した個々のSRFタンパク質について18-oxo-CLAの環化を制御する機能を調べる。
研究成果を複数の論文にまとめており掲載料の支払いを見込んでいたが、年度内に支払う状況に至らなかったため、次年度使用額が生じた。論文掲載料として執行する予定である。
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bioRxiv
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10.1101/2023.08.07.552212