研究課題/領域番号 |
22K05467
|
研究機関 | 東京農業大学 |
研究代表者 |
斉藤 竜男 東京農業大学, 生命科学部, 准教授 (40612065)
|
研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
|
キーワード | 金触媒 / 有機合成化学 / 天然物合成 / 蛍光分子 |
研究実績の概要 |
本研究では、申請者が発見したビニル金中間体の反応性の解明による新しい金触媒環化反応の開発を目的として、以下の機能性多環骨格形成反応の開発を行い、金触媒の優れた官能基・元素許容性を活用した高効率な機能性分子群の合成を通じて、ビニル金中間体の特性を明らかにします。 1. 金触媒反応を用いた双環性蛍光分子の合成では合成戦略の確立とDFT計算による反応機構解析により、プロトン源の添加が反応進行に重要であることを明らかにしました。その後基質適用範囲の調査を経て官能基の変換により様々な蛍光波長の分子軍の創出に成功しました。2. 多環式複雑天然物であるゴニオドミンAのA環部の合成研究では金触媒での環化反応は実現できなかったため、新たにラジカル環化反応を基盤とした新規合成戦略を計画しました。これまで中田らによるヨウ化サマリウムを用いたラジカル環化反応はポリエーテル合成において強力な手法として広く利用されていましたが、エキソメチレンを有するA環構築では環化反応の後に複数の工程を必要とします。そこでプロパルギル基を有するアルコキシビニルスルホキシドも基質に設定し、ラジカル環化反応と続くPummerer反応を行うことで、市販の試薬より8工程で合成を達成しました。本合成法はグラムスケール合成でも利用可能であることも明らかとし、今後全合成に向けた実用的な手法であることがわかりました。現在引き続きB環部の合成と、D,E環部の合成研究を行なっています。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
双環性蛍光分子の合成研究ではすでに反応調査を終え、化合物の物性評価を進めているところです。データ収集後に国際論文誌に投稿する予定です。ゴニオドミンAの合成研究では当初計画した合成戦略では実現できなかったものの、新たに計画した合成経路で目標であるA環部の合成を達成し、国際論文誌にアクセプトされました。
|
今後の研究の推進方策 |
ゴニオドミンAの合成研究では全合成に向け、残された部位の合成経路開拓を進めていく予定です。また機能性分子創製研究では、DFT計算を基盤とした分子設計を行い、金触媒の優れた官能基・元素許容性を活用した高効率な機能性分子群の合成を引き続き進めていく予定です。
|
次年度使用額が生じた理由 |
今年度は小スケールでの検討が多く計上していた消耗品費用を全て使用しませんでした。今年度使用しなかった助成金については次年度に分子モデリングソフトウェアの最新版の購入に充てる予定です。
|