研究課題/領域番号 |
22K05472
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研究機関 | 宇都宮大学 |
研究代表者 |
吉澤 史昭 宇都宮大学, 農学部, 教授 (10269243)
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研究分担者 |
豊島 由香 宇都宮大学, 農学部, 准教授 (70516070)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | トリプトファン / タンパク質合成 / 肝臓 / シグナル伝達 / ラット |
研究実績の概要 |
昨年度に引き続いて、初代培養肝細胞を用いてトリプトファンの肝タンパク質合成促進作用のin vitro評価系の確立を目指して研究を進めた。初代培養肝細胞をKrebs-Henseleit (KH) Buffer、あるいはMinimum Essential Eagle Medium(MEM)培地で処理し、その後トリプトファンを添加して、絶食状態の動物にトリプトファンを投与した状況を初代培養肝細胞を用いたin vitro系で再現することを試みた。タンパク質合成の活性変化は、トリプトファン刺激に鋭敏に応答することが明らかになっている翻訳開始調節因子であるribosomal protein S6 kinase 1(S6K1)のリン酸化状態を指標にして評価した。KH Buffer、あるいはMEM培地での処理時間とトリプトファンの処理濃度および処理時間を変化させてS6K1のリン酸化状態の変化を調べたが、S6K1のリン酸化が増加する実験条件は見つからず、絶食状態の動物にトリプトファンを投与した状況を反映した評価系の確立には至らなかった。一方、絶食させたラットにトリプトファンを経口投与する実験系では、肝臓のS6K1のリン酸化の増加とタンパク質合成速度の増加が再現性良く確認されたことから、トリプトファンの肝タンパク質合成促進作用の発現には別の因子が関与している可能性が示唆された。そこで、初代培養肝細胞を用いてトリプトファンの作用に対する血清の関与について検討を開始した。 以上のようにin vitro評価系の確立が難航していることから、並行してラットの肝臓を用いてオルニチン脱水素酵素(ODC)の活性測定法の確立、ポリアミン濃度の測定法の確立に着手した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
本研究の目的を達成するために、3つのマイルストーン「1. トリプトファンの肝タンパク質合成促進作用の培養細胞を用いたin vitro評価系の確立」、「2. トリプトファンによるODCの活性変化のラット肝臓および初代培養肝細胞での確認」、「3. オルニチン代謝に関わる酵素(オルニチンアミノ基転移酵素(OAT)とODC)の関与の明確化」を設定して研究を進める計画である。昨年度から上記の項目1を中心に研究を進めているが、予想以上に培養条件の検討に手間取りin vitro評価系の確立には至っていない。項目2および3を進めるにあたりin vitro評価系の確立は非常に重要であるが、その確立が難航していることから、引き続きin vitro評価系の確立を目指しつつ、動物を用いたin vivo評価系での解析を中心に研究を進める方針に変更した。次年度早々に項目2に着手できるようにODCの活性測定法の確立、ポリアミン濃度の測定法の確立に着手し、研究の遅延を最小限に抑える努力をしているが、研究は当初の予定より遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
本研究では、目的を達成するために3つのマイルストーン「1. トリプトファンの肝タンパク質合成促進作用の培養細胞を用いたin vitro評価系の確立」、「2. トリプトファンによるODCの活性変化のラット肝臓および初代培養肝細胞での確認」、「3. オルニチン代謝に関わる酵素(OATとODC)の関与の明確化」を設定して研究を進めている。本年度まで上記の項目1を中心に研究を進めたが、in vitro評価系の確立には至らなかったため、ラットの肝臓を用いたin vivo評価系で解析を進める。まず、絶食させたラットにトリプトファンを経口投与して、トリプトファンによるODCの活性変化を肝臓で確認する。そして、項目3について、阻害剤等を用いてin vivo評価系で可能な実験を行うのと並行して、血清の関与を念頭に初代培養肝細胞の培養条件を検討してin vitro評価系の早期確立を目指すとともに、ラットの肝臓から単離した肝細胞を用いて、ODCの過剰発現が肝タンパク質合成に与える影響を解析する。
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