研究課題/領域番号 |
22K05486
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研究機関 | 国立医薬品食品衛生研究所 |
研究代表者 |
鈴木 美成 国立医薬品食品衛生研究所, 食品部, 室長 (40469987)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | ナノマテリアル / 消化液 / spICP-MS / 粒径分布 |
研究実績の概要 |
ナノマテリアル (NM) の毒性を修飾する因子は、組成・大きさ・形状等多岐にわたるため、リスク評価手法自体も確立されていないのが現状である。しかしながら、NMが消化液中で溶解するのであれば、別途NMとしてリスク評価を行う必要性は低いと考えられる。一方で、消化液中でイオン性金属からの粒子状態の金属が生成されるのであれば、生成される粒子の組成・大きさ・形状等による影響の差異によるものの、別途NMとしてリスク評価を行う必要性が低い可能性もある。そのため、人工消化液中でのナノマテリアルの安定性を評価することは、NP状金属と非NP状金属とを区別して食事性曝露評価あるいはリスク評価を行う必要があるか判断するための重要なデータとなると考えられる。そこで、これまで分析経験のあるAg-NPsと食品添加物としての利用がEUで禁止されたTiO2-NPを対象として、人工消化液中での安定性を評価した。 公称粒径 60nmのAg-NPと300 nmのTiO2-NPに対して人工消化液を用いた逐次処理を行った。またイオン状態の標準溶液も供試した。得られた抽出液は適宜分散溶液で希釈を行い、spICP-MS分析により粒径分布を解析した。 Ag-NPは唾液中では粒径に変化は認められなかったが、胃液・腸液中では溶解して20 nmほど粒径が小さくなり、数濃度も減少した。TD試料を用いた分析結果からは、食品中のAg-NPは粒径20~30 nmとの結果を得ていることを踏まえると、実際の食品中に含まれているAg-NPは人口消化液中ではほとんど溶解すると考えられた。一方で、TiO2-NPは人工消化液中では40 nmほど平均粒径が大きくなっていたことから、人工消化液中では一部のTiO2-NPは凝集していると考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
イオン状態のAgおよびTiについても人工消化液中でNPの生成を確認したことにくわえて、Eh-pHダイアグラムによる物理化学的パラメーターを基にした理論値との整合性が取れたことも確認できた。 また、e-Statで公開されている国民健康・栄養調査のデータを基にして、14食品群に分けた東京のトータルダイエット試料を作成した。これは、次年度以降に研究に使用する。 以上、当初の予定通り研究を実施することが出来たことにくわえて、次年度以降の研究のための準備も着々と進めることが出来た。。
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今後の研究の推進方策 |
検討したAg-NPおよびTiO2-NP以外のナノ粒子として、SiO2-NP・Au-NP・Pt-NPについて同様の人工消化液処理を行い、spICP-MS法を用いて粒径分布に変化があるかどうかを評価する。さらに、イオン状態の標準溶液についても同様に処理を行い、人工消化液中でNPが生成されるかどうかを評価する。 トータルダイエット (TD) 試料に対しても、人工消化液の処理を行い、食品に含まれているNPの粒径分布や濃度について評価を行う。この結果を基に、3年目における検討を行う際にTD試料に添加する粒径を決定できるようにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
人工消化液を用いた検討が順調に進んだため、申請時の計画であった消耗品の使用量が減少した。 繰越した研究費は測定試料及び試薬等の消耗品に使用する。また、これまでのナノマテリアルに関する研究成果を国際誌へ投稿するための英文校正費に充てる予定である。
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