• 研究課題をさがす
  • 研究者をさがす
  • KAKENの使い方
  1. 課題ページに戻る

2022 年度 実施状況報告書

味覚情報伝達における末梢組織から味神経への味情報リファイメントに関する研究

研究課題

研究課題/領域番号 22K05492
研究機関京都大学

研究代表者

林 由佳子  京都大学, 農学研究科, 准教授 (60212156)

研究期間 (年度) 2022-04-01 – 2025-03-31
キーワード塩味 / 酸味 / 味細胞 / マウス / 5HT / ATP受容体
研究実績の概要

中枢に誤った情報が誤入力されないための味情報のフィルターにATP受容細胞が関与しているのではないかと仮説を立てた。味蕾の中では異なる味を受容する味細胞とその間隙を各々の味種に対する味神経が密接している。ATPを神経伝達物質として受容する細胞が存在することにより、ヒトの感覚でいわゆる「閾値以下の物質がほかの味種が存在することによってわかる隠し味」、「甘味による酸味・苦味の軽減」といった情報の統合、S/N比増加、順応が行われると考えられる。本申請では、未解明のⅢ型の味細胞から分泌される神経伝達物質を同定し、味神経への誤情報の伝達を抑制し正しい情報を明確にするリファインメント機構を解明することを目的としている
カルシウムイメージング法と細胞染色法により、ATPや各種味溶液に細胞応答を示した細胞におけるセロトニンの有無を確認した。その結果、ATP応答細胞がセロトニンを必ず有する一方で、必ずしも全ての酸応答細胞がセロトニンを有しているわけではないことを示した。続いて、免疫組織染色を行い、味蕾内の各種味細胞におけるセロトニンの分布を調べた。その結果、Ⅱ型細胞はセロトニンを発現しない一方で、Ⅲ型細胞マーカーのNCAM発現細胞の全てがセロトニンを発現しているわけではないことが示された。さらに、酸味受容型Ⅲ型細胞マーカーのPKD2L1およびCAR-4を発現する多くの細胞が、セロトニンを有していないことが示された。以上の結果から、「酸味受容型」Ⅲ型細胞はセロトニンを有しておらず、「ATP受容型」Ⅲ型細胞はセロトニンを有していることが明らかとなった。すなわち、「酸味受容型」Ⅲ型細胞が味神経とシナプス形成をしていないことが示唆された。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

円安の影響を受け、すべての試薬が高騰かつ輸入に時間がかかったこと、抗体のロットの違いにより染色の条件の検討を行わねばならず、当初の計画より遅れていたが、現在はおおむね順調に進み始めている。

今後の研究の推進方策

目的達成のために、ヒトの味覚に近いマウス(C57BL系統)を実験に用い、マウス舌から単離した味細胞の応答(細胞内カルシウム濃度上昇)とそれに続く免疫化学染色によってそれに関わる物質を探索、同定する。その物質が、味受容に影響を与えるのか調べる。
カルシウム蛍光指示薬をローディングした単離味細胞を用いて、ATP受容味細胞、酸味・塩味受容Ⅲ型味細胞、を選択する。次に、その細胞をGABA抗体、Ⅲ型味細胞マーカー抗体(SNAP25、GAD67、NCAMs)で多重染色をする。酸味応答をする細胞にはⅡ型味細胞は存在せず、Ⅲ型味細胞であることを既に確認済である。さらに、免疫組織染色によってこれまで、味細胞の神経伝達物質と考えられているGABA、NAの分布を多重染色にて調べる。
以上を解析したのち、その結果もとにして次の検討に進む。すなわち、カルシウム蛍光指示薬をローディングした単離味細胞の5基本味やATPに対する応答性を確認する。次に、前述で明らかにした神経伝達物質を作用させ、再度同様に味溶液に対する応答性を調べる。さらにその細胞を5-HT抗体、GABA抗体、Ⅲ型味細胞マーカー抗体で多重染色をする。それらの結果を統合して、ATP受容型味細胞が他の細胞の応答抑制や味情報の神経への伝達への関与を解析する。

  • 研究成果

    (1件)

すべて 2022

すべて 学会発表 (1件)

  • [学会発表] マウス有郭乳頭と葉状乳頭由来の塩化ナトリウム応答味細胞の特性2022

    • 著者名/発表者名
      井上心、重岡徹、林由佳子
    • 学会等名
      日本味と匂い学会第56回大会

URL: 

公開日: 2024-12-25  

サービス概要 検索マニュアル よくある質問 お知らせ 利用規程 科研費による研究の帰属

Powered by NII kakenhi