味細胞はⅠ型~Ⅳ型の4つに分類され、Ⅱ型は甘味、うまみ、苦味を認識する細胞、Ⅲ型細胞は酸味を認識する細胞であると考えられている。上記の細胞のうち味物質を認識するのはⅡ型とⅢ型細胞である。甘味、うまみ、苦味はⅡ型細胞で受容され、酸味はⅢ型細胞で受容され、塩味は複数の細胞タイプでの応答が報告されている。甘味、うまみ、苦味に比較し、リガンド(味物質)がイオンである酸味・塩味の味受容メカニズムは、受容体を含めて不明なことが多い。しかし、先行研究から、Ⅲ型細胞が神経伝達物質としてのATPを受容するATP受容型とATP非受容型に分類され、塩味と酸味はATP非受容型Ⅲ型細胞に受容されること、そして、酸味のみを受容する細胞と塩味・酸味両方を受容する細胞が存在することが明らかにされている。前年度の研究で、Ⅲ型細胞は酸味受容細胞と神経伝達物質ATPを受容するATP受容細胞が存在することや、Ⅲ型細胞が高濃度の塩味を受容することが報告されていた。しかし、高濃度の塩味の受容メカニズムは受容体を含め、不明な点が多い。そこで本研究では高濃度の塩味を受容するⅢ型細胞の特性を解明することを目的とした。 まず酸味細胞の塩味受容に着目し、pH応答性と塩味受容との関連性を調べた。カルシウムイメージング法で酸味細胞が応答した酸味溶液のpHと、塩味溶液への応答性を確認したが、特定のpHへの応答と塩味受容との関連性は確認できなかった。その一方で、酸味には応答せず、塩味溶液にのみ応答したⅢ型細胞が多く確認できた。次に、高濃度の塩味を受容するⅢ型細胞の、ATP溶液と酸味溶液への応答性を確認した。
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