研究課題/領域番号 |
22K05510
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研究機関 | 岐阜大学 |
研究代表者 |
北口 公司 岐阜大学, 応用生物科学部, 准教授 (50508372)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 食物繊維 / ペクチン / マクロファージ / 炎症 |
研究実績の概要 |
食物繊維が、腸内細菌を介して保健機能を示すことが明らかになりつつある。しかしながら、個人ごとに腸内細菌叢の組成は大きく異なる為、どのような食物繊維をどのくらい食べれば良いのか、統一した見解は得られていない。一方で、特定の食物繊維が腸管を構成する細胞に直接働きかけ、その機能を制御している可能性が示唆されている。研究代表者らは、水溶性食物繊維の一種であるペクチンが腸管の免疫細胞に作用し、炎症を調節していることを発見した。しかしながら、どのようにペクチンが免疫細胞の炎症を調節しているのかは不明である。本研究では、ペクチンを認識し、腸内細菌非依存的に免疫細胞の機能を制御する分子とその機構を明らかにすることを目的とした。 これまでに研究代表者らは、ペクチンがマクロファージに直接作用し、炎症生サイトカイン発現を負に制御していることを見出している。そこで、マクロファージからペクチンと結合するタンパク質が発現しているのかを、ペクチンをリガンドとしたリガンドブロット法で探索したが、ペクチン特異的な結合シグナルは観察されなかった。一方で、ペクチンによる炎症性サイトカイン発現の抑制作用が、PI3キナーゼの阻害で消失したことから、この経路がペクチンの抑制性シグナルに関与している可能性が示唆された。さらに、ペクチンの受容体候補分子のフィブロネクチンがペクチンと結合し、インテグリンからのシグナルを調節している可能性も考えられた。今後は、これらのシグナルにペクチンの化学構造が及ぼす影響を調査し、サイトカイン発現との関連を明らかにしたい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
ペクチンとマクロファージとの結合の可視化やペクチン結合タンパク質の検出で、特異的なシグナルが得られず、候補分子の探索が上手くいかなかったため、メカニズムの解析がやや遅れている。一方で、細胞内シグナル伝達阻害剤を用いた実験や既報のペクチン受容体をターゲットとすることにより、ペクチンの抑制機構の一端が解析できることが分かった。
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今後の研究の推進方策 |
マクロファージからのペクチン結合タンパク質の探索実験は引き続き、実験方法や条件を検討し、新規ペクチン認識分子の同定を目指す。さらにマクロファージ以外の腸管構成細胞のタンパク質もペクチン受容体を発現している可能性がある為、これら細胞由来タンパク質も用いてペクチン認識分子を広く探索する。同時に、ペクチン受容体の候補としてフィブロネクチンとインテグリンの結合やシグナル伝達経路にペクチンがどのような影響を及ぼすのかをサイトカイン発現や食作用などのマクロファージの機能との連関を中心に解析する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
新規ペクチン認識分子の探索で候補分子が得られなかった為、候補分子の解析実験用に計上した試薬代が浮いた為。来年度も引き続き、ペクチン認識分子の探索実験を行い、候補分子を幾つか同定する予定である為、それらの機能解析実験用の試薬代として使用する予定である。
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