研究実績の概要 |
これまでの研究で、グルタミン酸を含むジペプチドに好塩基球細胞株に対する顆粒放出抑制による抗アレルギー効果があることが明らかになっている。本年度は、脱顆粒抑制効果以外の生理効果について検討した。リポ多糖で炎症誘導したマウスマクロファージ細胞株RAW264.7細胞の炎症性サイトカイン(免疫タンパク質)の産生を指標としてグルタミン酸含有ジペプチドの抗炎症効果を検討した。その結果、評価した16種類のグルタミン酸含有ジペプチドには顕著な抗炎症効果は認められなかった。そこで、脱顆粒抑制効果においてアスパラギン酸とグルタミン酸からなるジペプチドに顕著な効果が認められたことから、アスパラギン酸に着目し、16種類のアスパラギン酸含有ジペプチドの抗炎症効果を検討した。その結果、アスパラギン酸とアルギニンのジペプチド(Asp-ArgおよびArg-Asp)、アスパラギン酸ジペプチド(Asp-Asp)およびヒスチジン(His)-Aspに炎症性サイトカインであるIL-6およびTNF-αの産生を顕著に抑制する効果が認められた。 次に、グルタミン酸およびヒスチジンを含有するジペプチドとして、His-GluおよびGlu-Hisのラット好塩基球細胞株RBL-2H3細胞に対する脱顆粒抑制効果を評価した。その結果、両ジペプチドに活性が認められ、C末端がGluであるHis-Gluにより強い比活性が確認された。次に、ポリGlu(分子量12,000以上)およびポリHis(分子量5,000から25,000)について活性評価した結果、いずれにも活性が認められ、特にポリHisは、非常に強い脱顆粒抑制活性を持つことが明らかになった。ヒスチジン自体にも弱いながらも有意な抑制効果が認められた。一方、代表的なHis含有ジペプチドであるカルノシンとアンセリンにはいずれも脱顆粒抑制効果は認められなかった。
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