研究課題/領域番号 |
22K05512
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研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
菅原 卓也 愛媛大学, 農学研究科, 教授 (00263963)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | グルタミン酸含有ペプチド / 脱顆粒抑制効果 / 抗アレルギー効果 / ジペプチド / アスパラギン酸含有ペプチド / 抗炎症効果 |
研究実績の概要 |
これまでの研究で、グルタミン酸を含むジペプチドにラット好塩基球細胞株RBL-2H3細胞に対して顆粒放出を抑制する効果があり、抗アレルギー作用が期待できることが明らかになっている。本年度は、グルタミン酸ジペプチド(Glu-Glu)およびグルタミン酸とヒスチジンからなるジペプチド(His-GluおよびGlu-His)の3つのジペプチドについて作用機構の解明を行った。RBL-2H3細胞に抗原誘導性脱顆粒を誘導すると、脱顆粒シグナル伝達が惹起され、その結果、細胞内カルシウムイオン濃度の上昇および微小管の伸長が起こる。まず、抗原刺激によるカルシウムイオン濃度に及ぼす効果を検討した結果、わずかにカルシウムイオン濃度の上昇を抑制した。しかしながら、3種のジペプチドの脱顆粒抑制効果とカルシウムイオン濃度上昇抑制効果には相関性がないことに加え、カルシウムイノフォアA23187誘導性の脱顆粒に対しては、カルシウムイオン濃度の上昇を抑制することなく脱顆粒を抑制したことから、ジペプチドの脱顆粒抑制効果はカルシウムイオン濃度上昇抑制による効果ではないと推察した。そこで、細胞内カルシウムイオン濃度上昇に関連するシグナル伝達分子の活性化レベルに対する効果を検討したところ、いずれのジペプチドにもSyk、PLCγ1およびPLCγ2の活性化を抑制する効果は無いことが明らかになった。 一方、微小管伸長に及ぼす効果を検討したところ、微小管伸長に関連するシグナル分子(PI3KおよびAkt)のリン酸化を下方制御し、微小管伸長を抑制することが明らかになった。 次に、生体内脱顆粒モデルである受動皮膚アナフィラキシーモデルマウスに対するGlu-Gluの投与効果を検討したところ、抑制効果は認められなかった。この原因としては、投与量の不足あるいは代謝・吸収性によるものではないかと考えられるため、今後詳細に検討する必要がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初計画通り、令和5年度はグルタミン酸ジペプチドの脱顆粒抑制効果における作用メカニズムを解析した。その結果、ジペプチドは、微小管伸長を抑制することで脱顆粒を抑制するともに、カルシウム濃度依存経路においては、カルシウムイオン濃度の上昇を阻害することなく脱顆粒を抑制することが明らかになった。また、生体内脱顆粒モデルマウスに対しては、経口投与による抑制効果が認められなかった。 以上のように、当初令和5年度に実施を予定していた、①作用機構の解明、および②経口投与による生体内でのアレルギー反応に対する効果の検討を実施し、研究は予定通り進捗していると考えている。しかしながら、生体内での効果に関しては、今年度の検討では効果がまだ明らかになっていないため、令和6年度においては、実験条件の再検討を行ったうえで引き続き検討を行う予定である。
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今後の研究の推進方策 |
令和6年度においては、引き続きアレルギーモデルマウスに対するグルタミン酸ジペプチドおよびその他の活性が強いペプチドの経口投与による、アレルギー性鼻炎モデルマウスに対する症状改善効果を評価する。また、ジペプチドのバイオアベイラビリティーを明らかにするため、投与したジペプチドの体内動態を検討する。さらに、グルタミン酸と同様に酸性アミノ酸であるアスパラギン酸含有ペプチドについても脱顆粒抑制効果を評価する。さらに、本研究成果の社会実装を目指し、タンパク質を豊富に含む食品のプロテアーゼ分解物の効果を評価する。
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