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2022 年度 実施状況報告書

構造脂質を活用した食用油脂劣化メカニズムの解明

研究課題

研究課題/領域番号 22K05520
研究機関地方独立行政法人大阪産業技術研究所

研究代表者

佐藤 博文  地方独立行政法人大阪産業技術研究所, 森之宮センター, 主任研究員 (70443546)

研究分担者 渡辺 嘉  地方独立行政法人大阪産業技術研究所, 森之宮センター, 研究室長 (60416310)
研究期間 (年度) 2022-04-01 – 2026-03-31
キーワード脂質劣化 / 酸化 / 構造脂質 / エーテル結合
研究実績の概要

食用油脂の主成分であるトリアシルグリセロール (TAG) は種々の要因で劣化して風味劣化の原因となる極性化合物となるだけでなく、肝細胞がん等の形成にも関与している。そのため、我が国でも食品に酸価等を指標とした基準が設けられている。脂質の劣化メカニズムは非常に複雑であり、食品中の脂質の劣化をそのままの状態で分析することは困難である (図1)。そこで本研究では、単一構造の構造TAGを有機合成し、これを基質として劣化挙動を観測し、TAG劣化における隣接アルキル基の影響を解明することを目的としている。初年度である2022年度ではグリセリンとカルボン酸から同じアシル基をみっつ有するTAG (例えばトリオレインやトリステアリン) の合成法を確立した。同時に、グリセリンの1級アルコールと2級アルコールの反応性の差を利用して、Sn2位のみ異なる脂肪酸を導入した構造脂質の合成法も確立した。また、これらを基質として酸化劣化装置で強制的に酸化させ、その劣化ガスをヘッドスペースGC-MSで分析するためのメソッド開発を行った。これらの一連の流れはベースとなる方法であり、研究を通じて活用することができる。この方法で合成トリオレインを酸化劣化させたところ、初期に炭素鎖9以下のアルデヒド類が生成することがわかった。また、この時もちいた実験条件で4時間以上酸化を継続すると、対応するカルボン酸、5時間以上でラクトンやギ酸エステルも生成することがわかった。各化合物の経時的な変化にも着目した結果については、学会発表も行った。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

2022年度では、研究の初期段階で試薬として購入可能な構造TAGを用いて実験を開始する予定であった。一方で、これらを購入して純度分析をしたところ、劣化の本実験に用いるためには少し純度不足であったため、これらは実験条件の確立に用いた。一方で、構造トリアシルグリセロール (TAG) の合成法の開発と必要な基質を随時合成する計画をしていた。これらについては完全に達成することができた。
酸化劣化装置を用いたTAGの強制劣化の条件および、強制劣化後のサンプルのHS-GC-MS分析についてメソッド開発した。提案書に記載の通り実験をすすめ、冷却トラップ付きのHS-GC-MSを用いることで、わずか50 mgの油脂で劣化挙動を観測できることが分かった。

今後の研究の推進方策

現在までの進捗状況において、提案書に記載の通り実験をすすめ、おおむね順調に進捗している。トリアシルグリセロール (TAG) の劣化によって生ずる微量のガスが炭素鎖9以下のアルデヒドとカルボン酸がメインであることがわかり、さらには生成経路は不明であるもののラクトンやギ酸エステルが生じることも分かった。今後はこれらのガスの生成経路について明らかにしていくとともに、提案書に記載の通り構造エーテル脂質の合成およびこれらを基質とした劣化挙動について、TAGと比較しながら研究を推進していく。

次年度使用額が生じた理由

研究はおおむね順調に進展しており、予定していた金額についてもおおむねそのとおり執行することができたが、わずかに余りが生じた。翌年度以降も計画通りに研究を行う。

  • 研究成果

    (2件)

すべて 2023

すべて 学会発表 (2件)

  • [学会発表] 2,3-ジオレオイル-1-ドデシルグリセリルエーテルのリパーゼによるアシル基分解機構2023

    • 著者名/発表者名
      橋本尚樹、佐藤博文、大高敦
    • 学会等名
      日本化学会第103春季年会
  • [学会発表] トリオレインの酸化によって生ずる劣化化合物の経時変化2023

    • 著者名/発表者名
      服部幸太朗、佐藤博文、大高敦
    • 学会等名
      日本化学会第103春季年会

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公開日: 2023-12-25  

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