研究課題/領域番号 |
22K05522
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研究機関 | 宇都宮大学 |
研究代表者 |
山田 潔 宇都宮大学, 農学部, 講師 (30313076)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 制御性T細胞 / がん / 脂肪酸 / 乳脂肪球皮膜 |
研究実績の概要 |
CD36を高発現したTregに及ぼすMFGMの効果を明らかにするため、培養により分化させた制御性T細胞(Treg)にメラノーマ細胞の培養上清を添加し、CD36発現が上昇するかどうか検討した。また、CD36を介した脂肪酸取込みがMFGMにより抑制されるかどうかを明らかにするため、蛍光(BODIPY)標識脂肪酸の細胞内への取り込みの評価方法を検討した。 腫瘍モデル細胞として汎用されているメラノーマ細胞株B16を培養し、培養上清(CM)を回収した。Tregは、C57BL/6マウスの脾臓細胞から磁気ビーズ結合抗体を利用したMACS処理により精製したCD4 T細胞を、TGF-β存在下、CD3抗体/CD28抗体で5日間刺激培養することで得た。CMで48時間培養することによるTregにおけるCD36の発現上昇をフローサイトメトリーで解析した。コントロール培地で培養したTregと比べて、メラノーマ細胞のCMで培養したTregのMFI(平均蛍光強度)が上昇していることが認められた。この結果から、がん細胞培養上清でTregを培養することで、Tregの1細胞あたりのCD36発現が増加したことが確認できた。 CD36を高発現するマクロファージ細胞株RAW264.7をBODIPY標識脂肪酸を含む培地あるいはPBSで処理後、蛍光顕微鏡あるいはフローサイトメトリーで解析した。その結果、培地よりもPBSでの処理のほうがBODIPY標識脂肪酸の取り込みが促進されることが蛍光顕微鏡あるいはフローサイトメトリーで確認された。また、消化酵素処理したMFGMを添加することにより、マクロファージへのBODIPY標識脂肪酸の取り込みが抑制されたが、消化酵素と処理時間および使用するMFGMの調製方法によって脂肪酸取り込み抑制効果に差が生じることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
報告にあるようにがん細胞培養上清でTregを培養することで、Tregの1細胞あたりのCD36発現が増加したことが確認できた。しかし、CD36発現の上昇は顕著なものもではなく、今後MFGMの効果を検討するのに十分とはいえない可能性が考えられた。また、MFGMの効果についての検討を計画どおりに検討することができなかった。
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今後の研究の推進方策 |
モデルとして用いるがん細胞として、B16メラノーマ細胞株以外のものを使用することを検討する。このことにより、TregのCD36の発現をより増強する作用をもつがん細胞の培養上清を得ることが期待される。また、MFGM添加によるTregへの作用だけでなく、CD36を高発現するマクロファージ細胞株を用いて、CD36を介した脂肪酸取り込みに及ぼすMFGMの効果を検討していく。TregのCD8 T細胞に対する抑制作用を指標に、MFGMの効果を検討していく。
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次年度使用額が生じた理由 |
がん細胞の培養上清によるTregのCD36発現増強が十分でなかったことから、MFGM添加によるTregへの作用を検討するに至らなかった。このため、実験に使用する実験動物や細胞培養試薬の経費が予定よりも少なくなった。翌年度分の助成金と合わせて、実験動物、細胞分離精製試薬、細胞培養試薬、抗体の購入に使用する予定である。
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