研究課題/領域番号 |
22K05528
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研究機関 | 東北医科薬科大学 |
研究代表者 |
八百板 富紀枝 東北医科薬科大学, 薬学部, 准教授 (00382672)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 咀嚼 / 便通異常 |
研究実績の概要 |
本研究は、長期間粉末食で飼育したマウスの便通異常発現メカニズムの解明並びに食品の物性と食習慣、特に、その咀嚼が腸内細菌叢や腸内免疫システムを含めた腸内環境の維持に与える影響を明らかにすることを目的としている。具体的には、1)経日的な症状の変化、2)各免疫細胞の関与、3)咀嚼様運動の負荷、以上の三点について包括的な検討を実施する。 これまでに、粉末食飼育を離乳直後より開始したマウスを用いて、飼育17週目に便通異常が引き起こされることを確認している。これを踏まえて、令和4年度においては、本粉末食飼育マウスの結腸における炎症性サイトカイン、アクアポリン4(AQP4)、マクロファージ並びに好中球をターゲットとして検討を行った。その結果、粉末食飼育マウスの便通異常には、好中球の活性化、結腸における軽微な炎症、AQP4の発現増加等の関与が明らかとなった。また、本粉末食飼育マウスの盲腸内容物において、短鎖脂肪酸(SCFA)関連属菌が相対的に減少すること並びにSCFA濃度・SCFA受容体発現量が減少することを確認した。更に、長期間粉末食で飼育したマウスに対して、咀嚼運動負荷装置を用いて2時間にわたる負荷を施したところ、対照群と比較して有意な排便促進効果並びに好中球及びAQP4の発現量が減少することを見出した。以上より、腸内環境の維持において習慣的な咀嚼が重要であることが示唆された。 一方、これまで、離乳直後から17週間の粉末食飼育を実施したマウスを用いて検討してきたが、他の条件での検討は行われていなかった。そこで、次の条件で便通異常が引き起こされているかどうかを確認したところ、離乳直後から2週間では対照群との間に差は認められず、成長後から1か月間では、対照群との間に差が認められることが判明した。これらのことは、粉末食飼育を開始する時期や期間も重要な因子である可能性を示唆するものである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和4年12月から、大学の共通機器が故障した状態であることから、サンプルの解析については順調とは言えない。しかし、行動評価等において現象(症状)の確認が進んでいること並びにサンプルの採取も併せて実施していることなどから、概ね順調に進展していると判断した。なお、上記の機器については、令和5年5月に復旧する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き、実験に供するマウスの飼育開始時期や期間の検討、長期粉末食飼育から固形食に切り替えた条件における検討並びに咀嚼運動負荷を継続的に施す条件における検討を行う予定である。また、食品の物性が咀嚼に与える影響についても検討を加えるため、マウスの咬筋を用いた解析を実施する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
学会発表をオンラインで行い、その分の出張旅費が不要となったため。また、試薬等の納品時期が予定よりも遅れてしまい、支払いが次年度分の扱いになったため。
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