研究課題/領域番号 |
22K05534
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研究機関 | 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構 |
研究代表者 |
萩 達朗 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 食品研究部門, 上級研究員 (00510257)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 胆汁酸 / 腸内細菌 / 共培養 |
研究実績の概要 |
胆汁酸を介した腸内細菌の相互作用を解明する第一ステップとして、単独培養において胆汁酸がAkkermansia muciniphilaに与える影響を調べるとともに、A. muciniphilaと特定の腸内細菌との共培養系において、胆汁酸がA. muciniphilaに与える影響を調べている。 A. muciniphilaの単独培養系において、昨年度のトランスクリプトーム解析の結果から、胆汁酸がAkkermansia muciniphilaの膜タンパク質に影響することが明らかになったため、今年度はAkkermansia muciniphilaを胆汁酸添加および未添加の培地で培養し、プロテオーム解析で胆汁酸が本菌のタンパク質に与える影響を解析した。その結果、細胞膜に存在するトランスポーターのタンパク質発現が上昇していることが確認できた。一方、プロテオーム解析の検出感度の問題で、トランスクリプトーム解析結果で注目されたタンパク質変化が確認できなかった。 次に、Akkermansia muciniphilaと特定の腸内細菌を胆汁酸を含む培地で共培養し、トランスクリプトーム解析を行った結果、単独培養系でも胆汁酸存在下で発現上昇が確認できたRNDタイプやABCトランスポーターのほか、単独培養では変化が観察されなかった別のトランスポーターが影響を受けていることが確認できた。本トランスポーターは、胆汁酸存在下かつ特定の腸内細菌との共培養でのみ発現が減少しており、胆汁酸を介した腸内細菌の相互作用を解明する重要なファクターであると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
胆汁酸存在下でのAkkermansia muciniphilaと特定の腸内細菌との共培養系において、単独培養では確認できなかった胆汁酸のA. muciniphilaへの作用が明らかとなった。本研究の目的である胆汁酸を介した腸内細菌の相互作用解明に関する新たな知見が得られたことから、研究はおおむね順調に進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
これまで、胆汁酸がAkkermansia muciniphilaに与える影響を遺伝子、タンパク質レベルで解析してきた。そこで次年度は、単独および共培養系において胆汁酸がA. muciniphilaの代謝産物にどのように影響するか、短鎖脂肪酸を中心に解析する。
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次年度使用額が生じた理由 |
国際学会参加について、当初科研費から支出予定であったが、円安が進んだことで予算が不足し、別予算から計上したため次年度使用額が生じた。現在も、宿泊費や研究用ガスなどの物価高が進んでいるため、次年度使用額は、国内学会旅費や委託解析、消耗品等の物価高に対応するために使用する。
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