研究課題/領域番号 |
22K05544
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研究機関 | 高崎健康福祉大学 |
研究代表者 |
辻 聡 高崎健康福祉大学, 農学部, 助教 (20712756)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 納豆 / 味噌 / Dipeptidyl peptidase 4 / 機能性ペプチド / 2型糖尿病 |
研究実績の概要 |
我々は納豆と味噌が、2型糖尿病の治療薬であるDipeptidyl peptidase 4(DPP4)阻害薬と同じ活性を有する機能性ペプチドを含むことを報告している。納豆と味噌ではDPP4阻害活性の強弱に差がみられたが、多様な納豆と味噌の一部しか測定しておらず、納豆や味噌全体のDPP4阻害活性や性質は明らかになっていない。本研究では、DPP4阻害活性を基準に多数の納豆と味噌の性質を比較、評価することで、高機能性を有する発酵性大豆食品の製造方法構築に役立つ基盤技術の確立を目的としている。 令和4年度は味噌61種(米味噌53種、豆味噌4種、麦味噌4種)、納豆100種(ひきわり18種、極小粒18種、小粒25種、中粒18種、大粒21種)のDPP4阻害活性を測定した。納豆のDPP4阻害活性は総じて食品としては高い値を示していた。そのため、納豆は一般的にDPP4阻害活性物質を有していると考えられる。味噌のDPP4阻害活性は、大豆以外に米麹と麦麹を原料に使用しているため、納豆よりもタンパク質量が低くなる米味噌や麦味噌だけでなく、大豆のみを原料とし納豆と同程度もしくは高いタンパク質量を示す豆味噌も低い値を示した。これらの大豆発酵食品中のDPP4阻害活性物質はペプチドであるが、原料タンパク質量に影響を受けていなかった。味噌は麹菌の持つタンパク質分解酵素が、納豆は納豆菌の持つタンパク質分解酵素が主体となり原料タンパク質を分解している。この酵素の違いにより、原料タンパク質の分解形式が異なることが、これらの大豆発酵食品のDPP4阻害活性の差異に繋がっていると考えられる。味噌の試料数が当初計画よりも少なくなったものの、大豆発酵食品間のDPP4阻害活性の違いについて傾向を示すことができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
納豆試料は当初計画分の解析を行えたが、味噌試料の解析が完了していない。これは試料の分析にあたり、使用していた海外産の実験資材が、現在に至るまで長期に欠品状態となっているためである。現在は代替品が見つかったため、研究を進行可能な状態となった。しかし、代替品の使用条件の検討に時間を要したため、実験の進行が計画よりも少し遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
令和4年度に分析予定だった試料味噌に関しては、令和5年度に解析を行う。 味噌と比較して納豆が高いDPP4阻害活性を有していたことから、納豆菌の遺伝子およびタンパク質分解酵素を測定し、DPP4阻害物質の生成機構を解明する。また、味噌と納豆でDPP4阻害活性が異なる点について、麹菌のタンパク質分解酵素の活性等から解析を試みる。生成機構が解明できれば、製造工程の改良によりDPP4阻害活性ペプチドの生成量を増加させた発酵食品製造方法を構築に取り組む。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究に使用していた海外産の実験資材が、現在に至るまで長期に欠品状態となり購入できなかったことから、次年度使用額が生じた。次年度使用額と今年度以降分を合わせて代替品および、発酵食品の製造に関与する微生物の機能解析に用いる試薬類を購入予定である。
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