研究課題/領域番号 |
22K05547
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研究機関 | 日本獣医生命科学大学 |
研究代表者 |
落合 由嗣 日本獣医生命科学大学, 獣医学部, 教授 (40350178)
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研究分担者 |
武藤 淳二 科学警察研究所, 法科学第一部, 主任研究官 (80432186)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | リステリア / sublethal stress / コロニー多様性 |
研究実績の概要 |
これまでの成果として、亜致死的(sublethal)条件へ曝露したリステリアを寒天培地上に接種したところ、曝露時間に依存して形成されるコロニーが小さくなる知見を見出した。さらに過酸化水素や高温に継続曝露した後に寒天培地上での発育性状を解析したところ、ピルビン酸を添加した寒天培地のみでコロニー形成が観察される知見を得てきた。以上から、発育・生残に不都合な環境に置かれたリステリアでは、その環境への曝露時間に依存して増殖性低下が起きていることが示された。今年度においては、sublethalな条件に置かれた後に寒天培地上に形成されるコロニーの大きさを詳細に解析した。 リステリアは食肉分離株を用いた。常法によって培養・洗浄した菌をsublethal条件に曝露した。曝露条件は、過酸化水素(0.2%)、高温(50℃、55℃)、低pH(HClで3.0に調整したもの)とした。曝露後に菌浮遊液を回収、適宜希釈して2種類の培地、すなわち酵母エキス添加トリプトソイ寒天培地(TSAYE)、およびピルビン酸添加TSAYE(TSAYE-PYR)に接種した。37℃で培養し、24および48時間後において形成されるコロニーの大きさを計測した。 sublethal条件に曝露後のリステリアが形成するコロニーは、曝露条件に関係なく小さくなることが確認された。今回の解析で着目したのはコロニーの大きさの多様性である。曝露初期においては小型化したコロニーの大きさに顕著な多様性は観察されなかったものの、長期間にわたる曝露によって大きさに著しい多様性が認められた。コロニーの大きさは増殖性の多様性、すなわち表現型の多様性を示唆しており、本菌が不都合な環境での生残する戦略として発揮されていることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
曝露解析において得られるコロニー数が著しく異なる成績が得られた。そのため、実験系において何らかの不備があることが懸念され、詳細な条件検討を繰り返すことに時間を要した。以上の理由から当初の計画よりも進行が遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
今後も亜致死的な条件に置かれたリステリアがより効果的にコロニーを形成できる培養条件(培養温度、栄養条件、好気・微好気・嫌気条件)継続して模索することを計画している。 また、同じ遺伝子型に分類される一方で、低pHに対する感受性が著しく異なる分離株を見出した。異なる感受性がどのようなメカニズムに起因するかを解明するため、次世代シーケンスによって全ゲノムの塩基配列を決定し、低pHなどのストレスへの応答に関わる因子の塩基配列を中心に変異があるかを検索する。変異が見出された部分の塩基配列に置換を入れることによって耐性に影響がみられるかを解析する。
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次年度使用額が生じた理由 |
所属研究室で保管されていた器具・機材を使用することができたため、当初の計画よりも少額で本研究課題を明らかにする実験を進めることができた。2024年度以降には経済的負担の大きい次世代シーケンサー解析の実施を計画をしており、そちらに充てることを計画している。
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