研究課題/領域番号 |
22K05559
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
野村 亘 京都大学, 農学研究科, 研究員 (60724292)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | TORC2 / yeast / シグナル伝達 / Pkc1 / edelfosine |
研究実績の概要 |
TOR(Target Of Rapamycin)は、酵母からヒトに至るまで進化上高度に保存されたタンパク質リン酸化酵素であり、細胞の成長や代謝に必須なシグナル伝達経路を構成する。出芽酵母Saccharomyces cerevisiaeにおいて、TORが形成する複合体の一つであるTOR複合体2(TORC2)は、基質であるYpk1および Ypk2のリン酸化制御を通してスフィンゴ脂質生合成の調節に寄与する。TORC2-Ypk1/2シグナルは、機械的な細胞膜刺激やスフィンゴ脂質生合成の阻害などに起因する細胞膜ストレスにより活性化されるが、TORC2-Ypk1/2シグナル活性化の制御機構については不明な部分が多い。我々はこれまでに、ステロールとの親和性を有する合成脂質edelfosineが細胞膜ストレスによるTORC2-Ypk1/2シグナルの活性化を阻害すること、ならびにその阻害機構にCWI(Cell Wall Integrity)経路の構成因子であるPkc1が関与することを見出した。しかしながら、Pkc1によるTORC2-Ypk1/2シグナルの負の制御機構の詳細は未だ明らかではない。 本年度は、Pkc1の細胞内局在性に着目し、Pkc1-GFPを用いてedelfosineがPkc1の細胞内局在に及ぼす影響について検討した。対数増殖期の細胞では、Pkc1-GFPの局在は主にbud tipやbud neckに観察されるが、edelfosineを培地に添加することでbud tipやbud neck以外の母細胞を含めた細胞膜直下にもその局在が観察されるようになることを見出した。一方、TORC2は細胞膜直下にドット状に局在することがわかっているが、TORC2の細胞内局在性に対してedelfosineの大きな影響は認められなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
EdelfosineによりPkc1の細胞膜局在に変化を認めることが出来たことは、Pkc1によるTORC2-Ypk1/2シグナルの負の制御機構の作用機序の解明に繋がると考えられるため。
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今後の研究の推進方策 |
細胞膜ストレスによるTORC2-Ypk1/2シグナルの活性化には、細胞膜の陥入構造であるエイソソームが関与する。また、エイソソームとPkc1シグナルとの関連についても指摘されている。そこで今後は、TORC2-Ypk1/2シグナルの負の制御機構におけるPkc1の作用点としてエイソソームに着目して解析を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
EdelfosineがPkc1の細胞内局在性に影響を及ぼすことを見出したことから、本年度は顕微鏡を用いた局在解析に重点をおいて解析を進めたため、生化学的な解析に関連する試薬や消耗品等の支出を抑えることが出来たため。 次年度は、次年度使用額を使用して細胞内局在解析以外にも生化学的解析も実施して本研究課題の推進を図る。また、それらの解析に関わる機器・試薬類の購入の検討も計画している。
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